Presented by 幻冬舎ルネッサンス

特別連載インタビュー

漠然とした「みんな」ではなく、特定の「だれか」を確実に喜ばせるために

──のぶみさんには、幻冬舎ルネッサンス第1回絵本大賞の審査員を務めていただくことになっています。

 のぶみ:じつはぼくも、デビュー前に、絵本のコンクールに応募したことがあるんですよ。残念ながら、デビューはできませんでしたけど。審査を楽しみにしていますが、とくに、先ほど言ったような「お母さんならではのアイディア」が光る作品に大きく期待しています。

 しつけや子育てにつながるアイディアじゃなくても、「こういうキャラクターがいたらいいのでは……」とか、「こんなキャラクターが、うちの子のともだちだったらいいのに!」とか、そういうことを作品に込めてほしいと思います。特別なことでなくても、日ごろ思っていることを絵本にしてほしいなぁ、と。あるいは、「どうしてこういう絵本がないんだろう」、「こんな絵本があったら、絶対読ませるのに」という視点が見たいですね。
そんな絵本が、世の中のお母さんがたがいちばんほしがっている絵本ですし、「こどもにも読ませたい」と考えるもので、「子育てにも役だつ」ものなんじゃないでしょうか。お母さんが喜んで読んであげる絵本であれば、こどももきっと、自然と楽しんで読んでくれますよね。これはありそうでなかなかなく、究極の絵本とも言えます。

 極端に言えば、じつはぼくは、文章や絵が下手でもかまわないと考えているんです。画力や文章力は、その人の才能の問題が大きいけれど、絵本で最も大切なのは画力や文章力じゃなくて、その絵本の「核」が読者に響くかどうかだと思うんです。
 ぱっとひらめいた光るアイディアは、絶対にすばらしいものです。そのうえで、たとえばこどもに作品を読ませて反応を見る、あるいは編集者と話し合いを重ねるなどのプロセスを経れば、いいアイディアは必ず、「よい作品」に生まれ変わるはずです。アイディアに固執することなく、どうすればより「求められる作品」となるかを追求する、貪欲な姿勢が求められるのではないでしょうか。これは絵本づくりにかぎらず、すべての書籍に言えることだと思いますが、光るアイディアだけではなく、読み手のことを考えて、自分の「こだわり」をどこまで曲げられるかの「柔軟性」が求められるわけですね。

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