Presented by 幻冬舎ルネッサンス新社

特別連載インタビュー

自分にとっての「当たり前」が自分にとって書くべきテーマに。

──賞は取ったけれども本が出せなかった、不遇の時期に意識して取り組んでいたことはありますか?

 山内:ずっと小説一辺倒だったんですけど、この時期、ノンフィクションや新書、人文系の本など、読書の幅を広げて、社会のことを勉強しようと意識するようになりました。映画も、新たに好きになったジャンルの作品をたくさん観ましたね。時間があったのでひたすらインプットに費やして、その頃に蓄積したものが、いまでも自分のベースになっています。アウトプットに関しては、私の書いたものを読んで、感想をくれる親友がいたことは大きかったですね。率直な感想をくれるので、一人よがりな原稿を自分で直す癖がついた。スランプのときは、モチーフを出してもらったりもしました。そのとき、彼女に出してもらった課題に答える形で書いた短編も、『ここは退屈迎えに来て』に入ってます。

──普段開けていない自分の引き出しを開けるには、外からの刺激を意識的に取り入れるのも大事だということですね。

 山内:自分にどういう栄養を与えるべきか、ってことですよね。本に限らず、映画、音楽、美術、舞台。あと新聞の切り抜きでもなんでも、アンテナに引っかかったものはチェックするようにしてます。執筆はひたすら自分と向き合い、掘り下げる作業なので、どうしても孤独になりがち。あまり根を詰めるとメンタルがやられてしまうので、バランスをとる感覚も必要ですよね。当時は、出版が決まっていない状態で原稿を書き溜めていたから、締め切りがなくて、そうなると根が怠け者だから何も書かなくなってしまう。自分を奮い立たせるために、「何月何日までにあなたに原稿を出すわ」と親友に一方的に宣言して(笑)、彼女に提出してました。よくつき合ってくれたなぁと思います。本当の意味で最初に組んだ編集者は、その親友ですね。

──直木賞作家・山本文緒さんがデビュー単行本『ここは退屈迎えに来て』のオビに推薦文を寄せています。「ありそうでなかった、まったく新しい“地方(ローカル)ガール”小説です」。その後の山内作品に通底する「地方」と「女性」というテーマ系には、どのようにして辿り着いたのでしょうか?

 山内:受賞の時点では、萌芽はあったものの、そこまで自覚できてはいなかったんです。私は表現欲求が先走ってるタイプで、書きたい気持ちはあるものの、取り立てて語るべきテーマが自分にはないんじゃないかとずっと悩んでいました。平凡な時代に、平凡な街の平凡な家庭で育った、平凡な女子という自覚があったので。そんな中で、自分にとっていちばん誇れるものが、親友との関係でした。そこからまず「女の子同士の友情を描きたい」という気持ちに向かっていきました。R-18文学賞の受賞作を含め、『ここは退屈迎えに来て』に収録した8編は、基本的に女の子2人のお話になっています。あのタイトルは8編全体を象徴するものですが、「王子様みたいな存在に迎えに来てほしい」という意味ではなく、離れ離れになった女友達に迎えに来て欲しい、もしくは迎えに行きたいという意味でつけたんです。

──今でこそ女性同士の友情、シスターフッド(=女性同士の連帯)を描く物語は増えていますが、当時は本当に新鮮だったことをよく覚えています。

 山内:新人賞を受賞した時点では、手持ちのテーマはそれしかないと思っていました。それで編集さんに「女の子の友情」をテーマに書きたいと話すと、ちょっと失笑されて。「女性作家には恋愛を書いてほしい、恋愛小説は売れるから」とはっきり言われましたね。女同士の友情は恋愛より一段低いものだと、女性の編集者さんも思っているんだなと感じた憶えがあります。でも、本当にそうなのか? どうして女の友情は低く見られるのか? そういった疑問を深めていくうちに、女性であるということ自体が、大きなテーマになるんだと気づいたんです。地方についても同じで、自分にとっては当たり前な場所だけど、大阪・京都・東京といろんな街に住んだおかげで相対化できるようになって、地方都市の特殊性を考えるようになりました。

──小説ではまだ書かれたことのなかった風景、その風景の中で生きる人々の心情がたくさん詰まっていたように思います。

 山内:地元で車の助手席に乗って景色を眺めてると、目が死ぬんです(笑)。あの気分を、ずっとただ味わっていたけど、それを小説にするとなると、気分だけでは書けない。当時はまだ関連書籍も少なかったのですが、地方都市のことや、あとヤンキー論みたいなものも手当たり次第に読んだり、ネットの声を拾って研究したりしました。まとめサイトで地方在住の人たちが、国道沿いのチェーン店の看板だらけの写真をアップして、里山的なのどかな田舎は幻想でしかない、みたいな投稿をしているのを見て、「ふむふむ」と。そうやって声を拾っていくうちに、地方のリアルを描くことはれっきとした小説のテーマになるんじゃないかと、確信を深めていきました。どこまで共感を得られるかは未知数だったけど。

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