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特別連載インタビュー

大人になってから気づいた、作家から受けた影響“運命”だと思い、受け入れて生きていく

──退社して、東京にいらしたんですよね。

 万城目:そうです。祖父が東京にボロボロの雑居ビルを持っていて、母が相続して大家になっていたんです。一番上の階が空いていたので、そこにターゲットを定めまして。親には「エリートだけが行ける本社の経理課に栄転しまして。通勤が楽なんで、あの部屋使っていいかな?」と言ったら親は「まあ、いいよ」って。それで住民票も移して引っ越して、雑居ビルの管理人をやるというテイでいようと思ったんで雑居ビルの店子の皆さんにも挨拶して、それから実家に帰ってですね、「辞めちゃった」と言いましたよ。ひどい話ですよ。でも、2年という期限も伝えたし、誰にも迷惑をかけないので、あんまり文句は言われなかったですね。

──そこからの生活が、『バベル九朔』に反映されていますね。雑居ビルの管理人をしながら小説を投稿している主人公がビルの中で異世界に紛れ込むという話でしたから。

 万城目:反映されていますね。実際の僕は、最初の半年くらいは無職になって嬉しくて、ゲームばっかりしてました(笑)。「ああ、やっぱり働くの嫌いだったわ、俺」って。「無職の才能」があったんですね。働かない状態に不安を感じずに嬉しがることができるという。
「さすがにこのままではマズい」と思ってようやく書き始めるんですけれど、だいたい暗い話になるんですよ。無職ですから楽しいこともないし、それが小説に出てしまう。その頃は短篇のほうが何本も書いて応募できるから効率がいいと思い、短いものばかり書いていたんですが、短編だと妙に私小説っぽくなり、話が暗くなる。

──それで長編にシフトチェンジしたのですね。

 万城目:短編を新人賞に送っても一次選考すら受からず。自分でも暗いし面白くないなって分かってきて、1年半くらい経った頃にやっぱり長編かなと思いはじめました。それで、長編を書くことにして、「自分を書かない」ということに挑戦しました。放っておくと主人公が自分に寄ってきてしまうから、主人公をあえて40歳くらいのチビでデブでハゲにして、一人称もそれまでの「僕」ではなく「俺」にして、どう頑張っても自分に寄ってこない人物に設定したら、これが化けましてね。暗くなることがなくなって、ストーリーも嘘八百が書けるし、主人公もどんどん面白いこと言い出したんです。矯正器具をつけて新しいバッティングフォームを覚える、みたいなところがあったかもしれません。
それで半年くらいかけて長編を書いて送ったんですけれど、これがまた一次選考で落ちまして。そこからは僕も弱気になり始め、簿記の専門学校に通い、徐々に社会復帰の道を探りました。一級を目指して三級、二級と試験を受けて徐々に上がっていく中、「これがもう最後やなあ」と書き上げたのが『鴨川ホルモー』でした。二級の試験の次の週が新人賞の応募締切でした。

──『鴨川ホルモー』は京都の大学生たちの話ですが、その頃には、自分と近い学生の話を書いても、私小説っぽくならなくなっていたんですね。

 万城目:そう、学生の話は大学生の時に書いて以来、なんか書けなかったんですよね。「気持ち悪い」と言われたことはそれなりに残っていて、また気持ち悪いのを書いてまうかなと思って。でも自分は大学生の雰囲気をうまく書けるはず、という自信は妙にあって、これが最後だからと、絶対に自分のことを書かないと決めつつ、読む人が面白いと思うようにと考えて書いたら『鴨川ホルモー』になりました。

──あれは大学生たちが、「オニ」を使った謎の競技をするという奇想天外な話です。よくあんな競技を思いつきましたね。

 万城目:すぐ思いつきましたけどね。そういうのは苦じゃないんですけれど、それを小説に混ぜ込むということを思いつかなかったんです。そういうのは小説に入れちゃいけないとずっと思ってました。

──なんでそんなふうに思っていたんでしょうね。

 万城目:やっぱり育ちがいいんじゃないかな(笑)。いえ、近代小説とかを読んで「こういうのええな」と思ってる人ってね、その枠組みから離れられないんですよ。小説というのはなんとなくフォーマルなものだと思っている。その意味での育ちの良さです。要は古いんですよ。

──『鴨川ホルモー』はボイルドエッグズ新人賞を受賞しますが、この賞のことは知っていたのでしょうか。

 万城目:実はいっぺん他の賞に送って、一次選考で落ちたんです。それで「あれ?」と思って。今まで落ちた時は「ああ、やっぱりダメだったな」と思っていたんですけれど、この時は「あれが一次選考で落ちるのはおかしいな」というのがちょっとあって。初めて枚数を削って違う賞に送るということをやったら、受賞したんです。
ボイルドエッグズからデビューできたのは良かったと思います。ボイルドエッグズの代表の村上達朗さんとものすごくブラッシュアップしたんです。それがなかったら、あそこまで面白くなってなかったと思いますね。

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