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特別連載インタビュー

身近な世界をもう一度よく観察する

──五十嵐さんは実に多彩なジャンルの小説を生み出し続けています。書くうえでの心がけみたいなものはありますか?

五十嵐:僕の仕事は「エンターテインメントを提供すること」。小説は面白くなければいけない。面白くなければエンターテインメントではない。それを大前提に心がけを問われれば、僕自身はコンビニエンスストアのつもりでやっています。何かに特化した専門店ではなく、“コンビニ五十嵐”なら便利に大概のものは手に入る、と読者にはとらえていただきたい。エンターテインメントはホラー、恋愛、戦争、ホームドラマといろいろある。できるだけ幅広く取り揃えたいと思っています。

──これから小説を書いて本を出したい人は、まずどうすべきでしょうか?

 五十嵐:身近な世界を、もう一回よく観察してみることですね。銀行に行ったら、カウンターの中の行員の動きをよく見てみる。行員でもない限り、あの中には入れないわけで、知らないことばかりなんですよ。病院でも、コンビニでも同じで、さまざまな職業があるけれど、実際の細かな仕事は分かっていない。そこを観察して掘るだけでも、十分な材料を仕入れることができる。材料をいかにしてつなぎ合わせるか、うまくできたら小説になります。
今、世に溢れている文章は、総じてレベルが下がっていると個人的には思うのですが、まあそれでも問題はないんですよ。文章のうまい下手は関係ない。文章修行が有効なのは中学生までだと僕は考えているので、それ以上の年齢ならば文章修行は時間のムダ。小説を書くと決めたのなら、文章の上達に時間を費やすより、まず何を書きたいのかをよく考えて、そのために有利な方法論を探すことが近道だと思います。

──著書に「「正しい方法論」で臨みさえすれば、才能やセンスがなくとも「作家になる」のは決して難しくない」と書かれていましたね。(※編集部注:『超・戦略的! 作家デビューマニュアル』(PHP新書)

 五十嵐:最大のメソッドは良き友人を持つことかもしれません。常に寄り添って「あきらめないで」と言ってくれる人ですね。『リカ』は書き上げたあと、扶桑社の後輩に読んでもらいました。「怖がらせるためのアトラクションが少ない」とか、いろいろアドバイスをもらいました。『リカ』のなかに、ドアノブに髪の毛が巻き付けられるシーンがあるのですが、アドバイスに従ってもうひと盛り上がる工夫を凝らしました。
身の回りには、読書が趣味の人が一人くらいはいるでしょう。友達がいなければ、カルチャースクールなんかも相互批評できるから、場としてはいいと思います。下地はあるので、ド素人ではない有益な意見が交換できる。カルチャースクールの友達をたくさんつくったほうがためになるアドバイスをもらえるかもしれませんね。

──五十嵐さんのような作家になるには?

 五十嵐:僕はとにかく飽きっぽいんです。二作連続してミステリーを書くのはどうしても飽きてしまう。そんなこともあって常に違うジャンルのものを書くようにしてきたし、興味の赴くままにやってきましたが、これからは出版事情も厳しい時代です。作家の営業方針としては、ある分野に特化して作品を出し続けるほうが良いのかも、と迷うところです(笑)。いろいろなジャンルに手を出すと、ファンがつきにくいことがあるかもしれません。自分が得意なジャンルをあらかじめ決めて、そこを突き詰めていくやり方がいいと思いますよ。

──これからはどんなジャンルが受け入れられやすいのでしょう?

 五十嵐:ミステリー小説と時代小説はずっと生き残っていくと思います。
警察小説もミステリーの部類で一定の読者層もいますから、生き残っていくでしょう。

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