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物語と現実 〜 物語と現実(その3)

秋章

大阪府生まれ。小説を書き出したきっかけは、学生時代周りの友人が小説を書いていることを知り、自分も書いてみようと思ったこと。

物語と現実 〜 物語と現実(その3)

鑑賞を終え、映画館をあとにする私。歩きながら一人、心の中で映画批評をおこなっていた。
(作品の中身はアクションだったけど、友情やラブ要素も、ところどころあってなかなか面白かったな。けど、どうしてだろ? 以前にも観たことがあるような気がするんだけど……うーん、いつ、観たのかわかんないや)
何気なしに鞄から携帯を取り出し、時間を確認する。時刻は一三時三五分。
(帰るには早すぎるし、まだまだ時間があるから、遅めのランチと買い物して帰ろうかな? この辺、喫茶店やファミレスがいっぱいあるから、どこに行こうか迷うな。……とりあえず、人があまりいないところで落ち着いた雰囲気のところに行きたいな)
今、私が思ったことを携帯へ打ち込み、ネット検索をする。検索で最初にヒットしたのは、今いる場所から北に五百メートル先にある小さな喫茶店だった。近くにあるのでその店に決め再び歩きだす。

喫茶店内は、こぢんまりしていた。カウンター席が五席とテーブル席が四席ほどあり、ラジオや音楽も流れていない静かで落ち着いた雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。こちらの席へどうぞ」
マスターと思われる六〇代ぐらいの白髪頭の男性が店内に入った私をカウンター席へと誘ってくれた。
「いらっしゃいませ。お冷をどうぞ」
席へ座ったとたん、今度はギャルソンがお冷を運んできてくれた。
「あっ、どうも……」
言いながら、メニューを手に取る。喫茶店だけあって、サンドイッチやパスタといった軽食もありメニューも豊富だけど、中でもコーヒーとケーキの種類が多く何を頼もうか迷ってしまう。
一人メニューを見ながら悩んでいると、
「もし、メニューでお悩みでしたら本日のおすすめをどうぞ」
と、さっきのギャルソンに声をかけられた。
「あっ、ありがとうございます……じゃあ、せっかくなので本日のおすすめを一つ」
「かしこまりました」
しばらくして、
「お待たせしました。こちら本日のおすすめのアメリカンコーヒーとモンブランでございます。伝票をお渡しておきます。ごゆっくりどうぞ」
「どうも」
本日のおすすめのアメリカンコーヒーを、一口飲む。普段はめったにコーヒーを飲まない私でも飲みやすくおいしいと思えるほどだった。モンブランの甘さもちょうどよく、どちらも本当においしかった。
喫茶店で三〇分ぐらい過ごしてから本屋に立ち寄り、前々から気になっていた小説を購入した。面白くなかったら嫌だし、購入する前に軽く目を通しておこうと思っていたが、読み進めていくと、あっという間に自分が小説の世界に引き込まれていくのがわかる。それくらい面白いと思える内容だった。すぐに帰って続きが読みたいと思った私は、他に行きたいところも、したいこともなかったので急いで帰宅することにした。
「ふう。夢中になって読み終えちゃった」
自宅に戻った私は、買ってきた小説を夢中で読み進めていた。四時間近くもひたすら夢中になって読んでいた。読み終えたあと、
(初めて買う作家さんの作品だったから、あまり期待していなかったけど。面白かったなあ。この人の作品、他にもあるのかな? もしあれば、今度は別の作品も読んでみたいな)
と、思うほどだった。
何気なしに携帯を手に取り、ネットを立ち上げる。作家 城優と打ち込み検索をかける。一番上に表示された検索結果を見てみた。

(この人って他にもいろいろと作品を書いてたんだ。あっ、こっちの検索結果には作品の紹介がされてる。へー、この本も面白そう。こっちの本は映画化もされたやつなんだあ。この人のデビュー作って、どんな感じだったんだろ……明日もう一度本屋に行って、この人の作品、他にもいろいろ買ってこよう)

「さてと、明日の楽しみもできたことだし、ご飯にしようかな」
楽しい気分のまま冷蔵庫を開けてみる。まだ当分買い出さなくてもいいぐらいの食材が残っていた。適当に野菜とお肉を選んで炒めものとスープを作る。
「いただきます」
一人だけの食事でも毎回必ず、「いただきます」と「ごちそうさま」は言うようにしている。私が小さい頃からの習慣みたいなものだけど、さすがに人前でするのは恥ずかしいので、誰かと一緒に食事をしているときは、口には出さず、心の中で言うようにしている。
「やっぱり、おじいちゃん家の野菜は他とは比べものにならないくらいおいしい」
私の家では、スーパーへ買い物に行っても野菜を買うことはない。なぜなら、父方の父親、つまりは私の祖父が農業を営んでいるからだ。農業といっても、年齢的にも体力的にも厳しくなってきたので、実際は大量生産することをやめて、自分たちだけで食べる分や、親族に分ける分しか作らなくなった。
けど、おじいちゃんの野菜を求めてわざわざ畑まで足を運んで来る人もいるみたい。
「ごちそうさま」
食事を済ませ、あと片付けをする。五分ほどで片付けを終えると、そのままお風呂の準備をする。お風呂が沸くまで時間があるので中学、高校時代の友達にSNSでメッセージを送った。
『久しぶりぃ。元気? 今何してる?』
送って一分も経たずに、
『うわあ、本当に久しぶり!! 今ちょうどバイト終わったところ』
『元気よー。ってか、本当にめちゃくちゃ久しぶりじゃない! 高校入学以来、連絡ないから生きているのか心配したわよ』
『風邪ひいてダウンしているけど、それが何か? 処方薬飲んだから今から寝るところだったんですけど……』
『これから、彼氏とラブラブするところだったのに……てなわけで、今からイチャイチャ、ラブラブしてきまーす』
と、友達から一斉に返事があった。私は自然と笑顔になっていた。
(みんな、相変わらずだなあ。)
そんなことを思いながら、みんなとやりとりを続けていた。やりとりに夢中になってしまっていた私は、ふと時計を見て驚いた。
時刻は二一時になろうとしていた。
「やだ、もうこんな時間!?」
(さっき時計を見たときはまだ一九時半にもなってなかったのに……気付かないうちに、一時間半も時間が経っていたなんて……)
皆とのやりとりを途中で切り上げ、慌ててお風呂を済ませる。私がお風呂に入っているあいだにもみんなからはメッセージが届いていたようで、入浴後に携帯を立ち上げたら一〇件もメッセージが届いていた。
「やりとりするの、久しぶりだから仕方ないか」
その後もやりとりを続け、結局眠りについたのは日付が変わってからだった。

物語と現実 【全12回】 公開日
(その1)物語と現実 2019年4月11日
(その2)物語と現実 2019年5月10日
(その3)物語と現実 2019年6月26日
(その4)物語と現実 2019年7月3日
(その5)物語と現実 2019年8月26日
(その6)物語と現実 2019年9月6日
(その7)物語と現実 2019年10月4日
(その8)物語と現実 2019年11月1日
(その9)物語と現実 2019年12月6日
(その10)物語と現実 2020年1月10日
(その11)物語と現実 2020年2月7日
(その12)物語と現実 2020年3月6日