著者プロフィール                

       
嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その9)

嵯峨野 嘉竹

著者:嵯峨野 嘉竹
詩集3冊、私小説「私は猫なのね」などの自著がある。

嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その9)

 
いつもと変わらぬ
生活の音を聞きながら
 
いつもと変わらぬ
生活の匂いを感じながら
 
いつもと変わらぬ
家族の温もりを感じながら
 
君は逝った
 
静かに頭を垂れて
私達に向いてお辞儀をするかのような姿で
 
君は逝ってしまった
 
予想はしていた
君の寿命が短いことも いつかこの日が来ることも
 
悲しむ心は当たり前にある
だから涙も止めようとしても止められない
振り切ろうとしても君の姿が瞼から離れない
 
ただ 僅かなところで
君に早く楽になってほしいと願っていたことも事実なのだ
君が 治してあげられない病に冒されて
苦しむ姿を目の当たりにしても助けられない自分に
それ以上に 何もしてあげられない
手をこまねいているだけの自分がいたことも事実だ
君は私を映す鏡だったのだと思う
君を見ては 今の自分の姿が偽善に満ちたものか
真摯な心があるのか
総てを見透せた
 
籠の中で生まれ籠の中で 君は死んだ
生まれて間もなく親と離され 兄弟と別れて
君は私達の家に来た
大して恵まれてもいない待遇でも
君は不満そうな仕草もなく
いつもそこにいて私達を見
そして
何かを
囁き掛けていた
 
 

自由と差別

 
総てを知った上で判断できることを
方針と言う
 
一つの事を知らされて信じることを
洗脳と言う
 
様々な選択肢を知り その中から自分の意思を持つことを
信念と言う
 
総ての真実を教えられることを
自由と言い
 
一部を信じ込ませられることを
独裁と言う
 
自由に差別は着いてまわり
 
独裁には迫害が着いてまわる
 
自由に愛の生まれる土壌は育ち
 
独裁は人に希望の芽を育ませない
 
自由には平等の重みを感じ
 
独裁には平等の価値を知る
 
生きている間に
自由の味をろうなんて
君は
何と 悍ましいんだ
喜びと 悲しみの違いを意識できぬほど追い詰められ
希望と挫折の無念も忘れて生きている今に
この現世に自由なんて有り得ないだろうが
 
君は
そんなことも解らないで
この未知を生きてゆくのか
 
 

優しさを求めて

 
一人 歩く
ポツンと歩く
目的がない訳ではない

詩集 【全12回】 公開日
(その1)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年7月17日
(その2)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年8月26日
(その3)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年9月6日
(その4)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年10月4日
(その5)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年11月1日
(その6)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年12月6日
(その7)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年1月10日
(その8)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年2月7日
(その9)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年3月6日
(その10)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月1日
(その11)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月29日
(その12)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年6月30日