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嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その8)

嵯峨野 嘉竹

著者:嵯峨野 嘉竹
詩集3冊、私小説「私は猫なのね」などの自著がある。

嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その8)

君がいる

 
君がいなくてはいけない
あの人もいなくてはいけない
そして たぶん私もいなくてはいけない
だから
誰も傷つけてはいけない
ましてや無視などしてはいけない
どんな事があっても殺すなんてもってのほかだ
一人一人が いるべき所にいて
一人一人が 誰かに支えられて
一人一人が 誰かを支えているんだ
だから 生きてゆけるんだよ
 
 

乞食と聖人

 
聖人になった
とても立派な人だ
その次の日
他人が挨拶しても 知らん振りをする人になった
大勢の中ではいつも笑顔を絶やさない人なのに
貧乏人を相手にするとき見下した心根が見えた
著名人に会うと遜った姿に映る
ありがとうと言える人
馬鹿者と叱り
御免なさいねと素直に言える
そういう人に何故か惹かれた
 
 

貧乏人の絵葉書

 
あなたに相応しいものを 考えてみたけど
何も思い着かない
だから
こんな安物ですけど
私の心を写した絵葉書を送ります
他人が見ても理解らないけど
あなたに見てもらえれば
全てを知っていただける 愛
真実だと言える 優しさ
思い上がりではない 温もり
塞がれる事のない 継がり
正しさと 真実の意味
違いのない 誠実さ
それ達を 取換え引換え順不同に
これでもか これでもかと送り続けます
それを無償の愛と思えてもらえたなら
わたしとあなたの心は一つに結ばれるのです
わたしは 同じことを何度も繰り返します
以前 あなたに感じてもらえた無償の愛を
他の人にも伝えるために
そして
わたしの心に答えて下さったあなたのために
ふわり ふわりと時間をかけて
多くの人たちに送り続けます
今度は 希望の絵葉書を
 
 

くるみ

 
くるみは 眠る
左足の上にあごを乗せて
三日月のような形で
すやすやと 眠る
お腹が 静かに緩やかに波を打つ
時折 ゴロゴロと喉が鳴る
表情は 穏やかである
瞼の奥には 何が映るのだろうか……
取り敢えず 君の側に居てあげるね
君がここに居る限り いつまでもね
君が 宝物だと気がついたんだ
君がいないと想像しただけで
その淋しさが溢れてくるんだ
だから
いつまでもおてんばなくるみでいておくれよ
 
 

受け留める

 
痛くはないかい
今言われた言葉
君は素直に受け留められるかい
反発を感じてやしないだろうね
逆恨みに思ったりはしないだろうね
そこから始まるんだよ
人としての精進が
 
 

人間の歴史

 
君はこの人の歴史に感動する事ができますか
さらっと見過ごしてしまえば
取るに足らない煙のように思えてしまいます
しかし
当たり前の平静な歴史を造れることって簡単ではないのです
抑揚のある人生は我が儘であれば
意とも簡単にそれらしく形はできてしまうものなのです
それに比べると
その人たちは造ろうとして人生を送ってはいないから
なろうとして欲張った目的を掲げていないから
自然体で社会の一部に溶け込もうと努力しているから
人の心に訴えかけるのです
この人達の人生は守りではないのです
継続なのです
生きるという事は伝える事なのです
それができてこそ人と言わせてもらえるのです
しかし
哀しいかな 人は欲望の塊であり
餓鬼の心を捨て切る事のできない宿命にあるのです
人は 他人の幸福を妬み
残虐性に歪められた心をもっているのです
人は 何時でも人を殺し
人生の歴史を抹消する可虐性を秘めている
人の可能性に嫉妬し能力を否定する行動をとる
それらはすべからく
人が人間でしかないという証しなのである
人に生が有る限り 
この泥沼の社会は未来永劫に好転することはない
それは自分達が
変わる事を望まなかったからだと受け止めなさい
 
もし
心ある人達が俗社会に進化を求め立ち向えたなら
今の悍ましい歴史は変えることができるかもしれない
舌っ足らずの見識を真摯に受け止めることができれば
人に未来が指示されるかもしれない

詩集 【全12回】 公開日
(その1)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年7月17日
(その2)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年8月26日
(その3)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年9月6日
(その4)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年10月4日
(その5)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年11月1日
(その6)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年12月6日
(その7)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年1月10日
(その8)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年2月7日
(その9)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年3月6日
(その10)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月1日
(その11)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月29日
(その12)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年6月30日