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嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その3)

嵯峨野 嘉竹

著者:嵯峨野 嘉竹
詩集3冊、私小説「私は猫なのね」などの自著がある。

嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その3)

グローバル

柔肌の宿は
いつのときも心の中に在った
望めばそれとなりに現れて
自然な形で慰めに訪れる 具現化された温もり
何を疑う必要もなく
戸惑いも必要としない
それが それがの 一時を与えてくれる
 
未来なんて誰にもないんだ
約束された安らぎなんて
誰にも与えられてはいないんだ
造り上げるんだ
自分の力で築き上げるんだ
それが生きる証しだと思えないかい
 
果てしなく思えて
何の当てもなく思えても
誰も救ってくれる手はない
信じ合う事が できるのか
助け合う事が できるのか
 
造られた輝きの中に
集約された苦悩がある
生まれることのない温もり
育むことのない安らぎ
そして
見ることのない未来の結末

存在価値

君が今存在する事が
当然な状況だとは 思わないで欲しい
君を支える人々が先祖にいて
君を慈しみ育てた人々がいた事を片時も忘れないで下さい
その人たちは君を見守り叱咤し激励を送り続けた 君のためだけに
君が今 そこに人として立ち続けられるのは
その人たちの 君への期待の大きさがそうさせたんだ
君は自分の生きる目的を模索するため
そして
期待をしてくれる人たちのために
もがき続けなければならないんだ
生きるって そういう意義と重さがあるんだ

       

ナビゲーター

私は 空に向かって誓う
自分に誠意をもって姿勢を正す
私は信念に基づいた真摯な孝動を展開する…と
己の求める希望の道を極める努力を惜しまず
人々の期待に応える努力も惜しまぬことを
私は常に前向きに生きたい
偏屈な理想を語らせてもらえるならば
約束のない真実とは 
自分に嘘をつかない 堂々たる人々への訴えかけであり
屈折のない人々への同調である
偉そうに言わせてもらえるならば
人は未熟な妖精たちである
平気で嘘をつくし 優しい言葉をかけることもする
そうそう もう一つ付け加えるならば
未知の可能性を秘めた宇宙船でもある
晴れ晴れしいかな
私も憚りながら その宇宙船の乗組員の一人である
それこそが 生きる指針を求める道連れと呼んでもらえる
数少ないナビゲーターになれるのではないかな

オフ

幸福の 本当の意味を忘れてしまったときに
自分の心の強さ優しさまで見失ってしまうもの
耐える強さを持ち 他人を守る意義を知る人々が大勢いたなら
平和な時代は保てるもの
その石垣が崩れてしまったときから
止める事のできない生命の破壊が
人の歴史に刻まれてしまう

未熟な夢追い人

人は愚かな夢追い人
自分の罪は隠して他人の傷に塩を撫すり込む
不埒な流浪の裁判官
心を開けよ 心を見よ
疑いは自分の心を見透かす事である
そして 信じる事は誤ちをさせない事 弱き心を支える根であり
償いを潔しと認められる鷹揚さの礎である
 
明日への希望と受け止められる度量の無限の尺度となり
人とは弱い時間の旅人だと慈しむ優しさを携えた理念を育み
そして 次の誤ちを許さぬ信念を伝えられる砦を築く
だから敢えて言う
人生は ビジネスではないんだという事を認識してくれ
人生とは勝負なんかではなく 育むことなんだと気付いてくれ
そして
自らを裁く愚行は選ばないでくれ

ひととき

季節なのでしょうか
心も体も何故か浮き浮きとしてくるのです
それでも周りに目を配れば
近所のお婆さんがリュウマチが痛みだしたと言うし
ワンちゃんの元気がないと言う家もあるし
これから 夫々の病院巡りをしようと
僕の車のエンジンを駆けているところなのです
その人達は すぐに元気になるでしょう
恥ずかしいから人に見られないように出掛けましょう
あなたも 誰にも言わないで下さいね
さあ…静かに出発…出発

ひととき(ニ)

あなたの優しさで辺りを明るく染めて下さい
あなた色の安らぎに
人々の望むものを
許される範囲で満して下さい
人々の心の故郷は
あなたの手の中に存在します
 
遠くを見るより
近寄って見たほうが
真実はたやすく見えるもの
でも あなたの厚意と真実は
離れていても多くの人々に感動を与えられるのです
そして穏やかに心に寄り添うのです

自然淘汰

当り前に失われるもの
当り前に奪われるひ弱な生きものの命
置き忘れたものではない
それは天分なのですよ
人間の生まれついて持っているもの
宇宙に産まれ育ったもの総てが
持って産まれ 受け継いでゆかなければならない
不情という現実の宿命の上に集ってしまったのです
帰りたくとも帰る場所など初めから用意などされてはいない
何も得られない何も持って行けない
その場限りの時間貸しの試写会なんだ
君は その現実に何を挑むのか

無骨者

「お前 風邪ひいたんじゃないかい」
そう言われたときに
むきになって「鼻の中がつんとなっただけだい」と言った俺だった
本当は体かったるいし熱もちょっとはあるみたいだったけど
意気がって
本当は その心遣いが嬉しくて甘えてみようかなとは思ったけど
「何言ってるんだい 俺は壊したくても壊せない体力の持ち主だぜ」
「そんな柔な体はもっちゃいないぜ」とは言ってみたけどさ
その心遣いが嬉しくて不貞腐れたような態度で
余計な一言を言ってしまうのさ                   

詩集 【全12回】 公開日
(その1)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年7月17日
(その2)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年8月26日
(その3)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年9月6日
(その4)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年10月4日
(その5)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年11月1日
(その6)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年12月6日
(その7)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年1月10日
(その8)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年2月7日
(その9)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年3月6日
(その10)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月1日
(その11)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月29日
(その12)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年6月30日