執筆お役立ちコラム

童話の作り方を知ろう/童話出版講座

今も昔も多くの人に親しまれている「童話」。

イソップ童話の作者であるアイソーポス、グリム童話の編集者であるグリム兄弟、デンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンなどが著名な作家として挙げられます。

本コラムではそうした様々な作家の後に続く作品を書くため、童話制作時のポイントをご紹介します。

まずはジャンルを考えよう

世界にはさまざまなジャンルの童話が存在しています。

日常を舞台にした生活童話から、幻想的な世界を描いたファンタジー童話、科学的な設定が魅力のSF童話などです。

完全な創作ばかりではなく、偉人の冒険譚や武勇伝をまとめたノンフィクション童話もあります。

また、童話でありながら「子ども向け」とは思えない内容のものもあります。

近年では「本当は怖いグリム童話」のような切り口から、その内容が改めて考え直されています。

ターゲットや伝えたいテーマにあわせて、数あるジャンルから自分にぴったりのものを選びましょう。

得意な分野を活かそう

ジャンル選びの際には、その分野に詳しいかどうかも重要です。

幼児・児童向けの書籍であっても、独自性がなければ読者の心を動かすことはできません。

よく知りもしない世界について憶測で書いても、独自性はなかなか生まれません。

知識や経験を総動員して、あなたにしか書けない作品を作り上げることが重要です。

例えば、日々子どもの様子を見守っている母親が育児を題材にした生活童話を書けば、子どものありのままの姿を描いた独自性のある作品に仕上がるでしょう。

SF童話も、科学に詳しい方が書くことで設定に深みが増し、かつ子どもたちにも分かりやすい説明ができるはずです。

面白い童話を作るには、感性豊かな子どもたちをワクワクさせるような世界観と、それを分かりやすく伝えるための説明力が必要なのです。

内容と文字数は子どもの年齢別に考えよう

作品の内容と文字数は、ターゲットとなる子どもの年齢をもとに考えるのが良いでしょう。

もちろん個人差もありますが、読んで理解できる内容や文字数の限界は、読者の年齢に応じて大まかに区別することができます。

執筆の際には、ぜひ以下の基準を参考になさってください。

・幼児向け童話

一般的に、本の内容が理解できるようになる年齢は5歳前後と言われています。

そのため、ひとり読みができるかできないかという4~6歳くらいの子どもには、感覚に訴えかける内容の作品が良いでしょう。

挿絵を多く・大きく使うことで目に鮮やかな作品にし、文字数は最大でも10,000字ほどに抑えましょう。

・低学年向け童話

6~8歳ぐらいの子どもは幼児向け童話を卒業し、低学年向け童話を読み始めます。

子どもたちが登場人物の気持ちや人物間の関係性も理解できるようになるため、より話の内容を充実させることが可能です。

ただし、まだまだ長い文章を読むには負担の大きい年代です。

文字数を増やすのはあと少しだけ辛抱しましょう。

・中高学年向け童話

9~12歳になると、いよいよ本格的な物語が読めるようになります。

複雑な説明やストーリーも理解できるため、文字数を多少増やしても問題ありません。

実際、凝った説明を含むSF童話も、特にこの層から人気を集めています。

作品をシリーズ化し、複数巻に亘って展開することもできます。

長編ものが書きたい場合は、この読者層を想定しましょう。

テーマを設定しよう

ジャンルとターゲットの年齢層が固まったら、テーマを設定しましょう。

なかには残虐な内容を含む作品もありますが、現代向けの童話を作るなら、明るくて希望のあるものが理想的です。

人へのやさしさや思いやり、命の大切さ、いじめ防止、自然保護といったテーマが典型的です。

童話を読むのは子どもですが、中身をチェックして購入するのはあくまでも大人です。

目新しさも必要ですが、やはり多くの方に好まれる普遍的なテーマが良いでしょう。

独自のストーリー展開

最後に、童話のストーリー展開について考えます。

起承転結などの基本的な考え方については、過去のコラムをご参照ください。

今回特に注目したいのは、童話には起承転結の「承」を繰り返す傾向があることです。

例えば「桃太郎」における鬼退治の仲間集めや、あるいは「三匹の子豚」の子豚と狼の駆け引きにこの傾向が見られます。

「大きなカブ」の「うんとこしょ どっこいしょ」のようなセリフの繰り返しもそうですね。

繰り返すことで言葉にリズムが生まれ、強く印象に残り、子どもにも理解しやすくなります。

こうしたテクニックをどこで使用するのか考えながら、ストーリーを書き進めていきましょう。

ジャンル、ターゲット、テーマ、ストーリー……。

どれが欠けても作品の軸はぶれ、魅力が薄れてしまいます。

面倒に思われるかもしれませんが、最初に設計図を作っておくことで、作品のクオリティは格段に高まります。

今回ご紹介した手順をぜひお試しください。

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