執筆お役立ちコラム

読んでもらえる!読者の心を掴む自分史の書き方

近年「自分史を制作したい」と考える人が増えています。
人生の振り返りや親族へのメッセージなど、生き方や思いを伝えるためのものから、就職活動の自己分析などの自分を知る手段としての自分史まで、その目的は様々です。

しかし「自分史を作りたい」と思う人が増加している一方で、その書き方の基本は、あまり知られておらず、いざ書き始めようとすると悩む人が多くいます。そこでこのコラムでは、自分史制作の基本手順や、読者の心を掴む魅力的な自分史作りのコツを解説します。

自分史とは

まず、自分史とは一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、自分史の定義について説明します。

自分史とは?

自分史とは、今まで生きてきた自身の半生や生涯を文字に書き記したもの。自分自身が主役の、唯一無二のストーリーです。とはいえ、特別なことを書こうと硬くなる必要はありません。自分では平凡だと思える日常でも、その経験を通して感じた思いや生き様に焦点を当てることで特別で、かけがえのない物語となるのです。

自分史を書くメリットは?

自分史制作には、思いがけないメリットも存在します。
人生は山あり谷あり。楽しい記憶ばかりではないはずです。思い出したくない経験の一つや二つは誰しもあるでしょう。しかし、人生の振り返りや記録として自分史作りに取り組むうちに、そんな苦い経験も客観的に見つめるきっかけとなり、辛い経験から得られた要素や成長したポイントにも目が向くようになります。
自分史制作を通じて人生に正面から向き合った結果として、マイナスな出来事も肯定的に捉えられる人が多いようです。

自分史を書く前に目的を明確に

自分史を書く前に、制作の目的を明確にすることが重要です。
・何のために自分史を書くのか
・誰に向けて制作するのか
最低限この2つは整理しておきましょう。

自己分析(自分を深く知る)ために書く

自分史を書く目的の一つに、自己分析が挙げられます。自分を深く理解するために過去を見つめ直すことで、新たな発見に繋がるのです。
幼い頃から今までの人生を振り返り、経験や当時の思いを整理すると、自身の考え方を深掘りすることができ、自分の軸となる価値観に気付くきっかけになります。
就職活動のエントリーシートや、未来の進路に悩んだ時は自分史作りを通じて適正を考えるのも良いでしょう。

他者に自分の人生を理解してもらうため

自分史を残すことで、子供や孫が自身のルーツを知るきっかけになるかもしれせん。この場合は、前に説明した自己分析とは異なり、他者が読むことを意識して自分史制作をする必要があります。
出来事や事実と合わせて、経験を通じて感じたこと・その道や行動を選択した理由に触れると、自身がどんな人間か読む人に伝わる自分史に繋がるのです。

自分史の書き方基本手順

それでは、実際に自分史を作る手順を見ていきましょう。

1.時系列で年表をつくる

まずは時系列で人生の年表を作っていきます。記憶に残っている幼い頃から現在に至るまでの出来事を書き込みましょう。物心つく前の様子も知っていることがあれば記入します。
時系列で遡ると、印象に残っている出来事の量に偏りが生じるかもしれませんが、気にしなくても大丈夫。まずは思いつくままに経験や状況を書きだすことが大切です。
大きな事件や特別なイベントである必要はありません。日常の些細な出来事でも覚えているものを中心に年表を作ってみましょう。

2.年代ごとの思い出や感情を書きだす

1で出来事を書きだしたら、次は自分の内面にスポットを当てます。出来事を通して心に残ったことや思い出を振り返りましょう。

・自分が夢中になっていたもの
・どんなことに喜びを感じたか?
・失敗談、苦い思い出にも言及

自分を良く見せようとせず、ありのままの思いを書きだしていきます。ここで等身大の自分に向き合うことが魅力的な自分史を作りあげる大切な要素になるのです。

3.当時の出来事や時代背景を加える

1.2の出来事や思い出と合わせて、当時の時代背景も記載しておきましょう。
世代の違う人が自分史を見る場合「なぜこんな行動をしたの?」と不思議に感じるかもしれません。その時代の背景を解説すると、読者の理解が深まるはずです。

4.自分史テーマと構成を考える

ここまでの手順で自分史の要素を洗い出したら、いよいよ仕上げです。核となるテーマや構成を決めていきます。
自分史を1つの物語として他者に読んでもらう場合、このテーマや構成が極めて重要です。一番伝えたいテーマは何か?自分の人間性を良く知ってもらえるエピソードは何か?を考えたうえで、年表から特に書きたい項目を絞って構成を組み立てましょう。自分史作成中に話が、ぶれることのないよう、テーマや構成は書き出し前にじっくりと練る時間をとるのがおすすめです。

5.1~4を文章に落としこむ

最後に、テーマや構成をもとに文章を作成します。ここで重要なのは、読者を意識して定期的に内容を振り返ることです。
自分史とはいえ、自分の経験や思いを、ただ勢いに任せて書いていては最後まで読んでもらうのは困難です。分かりやすい文章になっているか、内容はテーマや構成から外れていないか、客観的な視点でチェックしながら書き進めましょう。

読者の心を掴む自分史の書き方のコツ

自分史を「他者に読んでもらう」目的で書く場合、読者が途中で離れてしまわないような工夫が必要です。ここでは、読者の心を掴む自分史を書くためのコツに触れていきます。

書き出しをどうするか

小説と違い、自分史制作では「書き出しをどうしたら良いか」と悩む人も多いでしょう。
書き出しが決まらないと迷っている方に、一般的な例としておすすめなのは出生時の様子から書くことです。いつ、どこで、どのように生まれたのか。家族構成や当時の生活についても描いていきましょう。そのうちに、自身の生育環境や性格形成の背景から自然と自分史の本題テーマへと繋がっていくはずです。

何を書くか

「自分史」にはこれまでの半生をすべて盛り込めるわけではありません。「自分史の書き方手順」でも述べたように、まずは書くべきエピソードを選び取り、積み上げる作業が必要です。その時に有効なのが、自身の半生をまとめた年表です。

人生のイベントを時系列でまとめたなかで、ぜひ書いておきたい目玉となるエピソードが浮かんでくるはずです。それをもとに一番伝えたいテーマを軸におきます。軸が決まったら、そのとき何が起きたのか、周囲の反応や、自身が何を考えていたのか、具体的に書き出してみましょう。

さらに自分史を通じて、出来事や経験があなたの人生にどのような影響を与えたのか掘り下げることができれば、読者もより関心を持って読み進めてくれるでしょう。

どのように伝えるか

いくらあなたにとっては印象深い経験でも、読者に伝わらなければ意味がありません。
読者の心を揺さぶるには、事実を書き連ねるだけでは不十分で、読者の「五感」に訴えかける必要があります。

例として「匂い」を取り上げてみましょう。
久しぶりに実家に帰省したとき、実家の匂いを嗅いで「ああ帰ってきたな」と思った経験は、どなたにもあるかと思います。そこでの「匂い」はどう表現できるでしょうか。

畳のイグサの香り? 漂う仏壇の線香の匂い?

具体的に書けば書くほど、読者がもっている感覚との結びつきがより濃いものになっていきます。読者の鼻の奥に実家の空気がありありと感じられたそのとき、読者自身の懐かしい記憶が呼び起こされるのです。このとき、あなたの体験はもはやあなただけの体験ではなく、読者にとっても重要なものとして価値を帯びます。
五感に訴える表現を通じて読者の共感を誘い、心動かす文章になると意識しましょう。

展開の工夫

各エピソードが充実してきたら、全体の並べ方や展開も考えてみましょう。
「書き出しをどうするか」で述べたように、最もオーソドックスな手法は時系列順でエピソードを配置する方法ですが、場合によっては単調になってしまいます。

そんな時には、時系列を無視して、最も印象深い出来事を最初に置く選択肢もあるでしょう。ビジネス書でしばしば見かける「最初に結論を提示する」という手法と似ているかもしれません。軸となる出来事を冒頭に持ち出すことで、統一感のある作品に仕上がるという利点があります。

また、現在から書き始めるのも良いかもしれません。「今」に至る道筋を辿りながらひとつひとつの出来事を解き明かすような展開にできれば、読者はミステリー作品に接しているときのような興奮をもって、最後まで読んでもらえるのではないでしょうか。

魅力的な自分史の特徴は?

前の章では、心を掴む自分史の書き方について解説しました。ここでは、次々読みたくなる魅力的な自分史と、そうでないものには、どのような違いがあるのか探っていきましょう。

魅力的な自分史とそうでない物の違い

あなたの自分史は、単に出来事の羅列になっていませんか。
年代ごとに事実をまとめただけでは、そこからあなたの価値観や思いを知ることはできません。魅力的な自分史とは出来事を書くのではなく、それによって動いた心の様子や感情を描くのです。あなたの熱が伝わり読者の心に触れるような表現を目指して自分史を作成しましょう。
また、自分のことを書くとなると熱がこもるあまり、読者を置いてきぼりにしてしまうこともあります。章ごとに内容を振り返り、書く分量は適切か?分かりにくい表現がないか?定期的に確認しましょう。

テーマを絞って人間性に焦点を当てよう

自分の歴史を書くと、出生から現在まで満遍なく書いてしまいがちですが、構成には注意が必要です。小説と同様「何を伝えたいのか」テーマを絞る意識を忘れないようにしましょう。
自分の年表作成を行ううちに、行動の動機となった自分の考え方の軸(価値観)に気が付くはずです。それら、今まで大切にしてきた価値観や自分にしかない人間性に焦点を当てて自分史を作成していけば、何が伝えたいのか分からないダラダラした文章ではなく、メリハリのある作品に仕上がるでしょう。

【まとめ】自分史の書き方手順やコツ

このコラムでは、自分史の書き方について基本的手順や魅力的に書くコツを解説しました。
その中でも特に重要なのは次の三点です。

➀自分史を書く前に目的を明確にする

誰に向けて、何のために書くのか、この二点は最低限明確にしておきましょう。
特に、読者に向けて書く場合は表現の仕方に注意し、自身の人間性が伝わる自分史を目指す必要があります。

➁自分史の基本手順5ステップ

1.時系列で年表をつくる
2.年代ごとの思い出や感情を書きだす
3.当時の出来事や時代背景を加える
4.自分史テーマと構成を考える
5.1~4を文章に落としこむ

自分史作りの基本ステップとして上記五つの手順を踏みましょう。いくら自分のことを書くからといって、いきなり書き始めるのは禁物です。年表で出来事を洗い出し、特に伝えたいテーマを絞った後に構成を考えて前準備を行えば、途中の脱線や読みにくい内容になるのを防げます。

③読者の心を掴む自分史にするために心がける点

読者の心を掴むような魅力的な自分史にするためには、出来事ではなく心の動きや人間性に焦点を当てることが重要です。自身に起きた事実を時系列にまとめるだけでは、ただの年表になってしまいます。
自分の行動や選択の軸になる考え方、価値観を中心に表現するのを忘れずに意識しましょう。

関連コラム

テキストのコピーはできません。