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古書はチョコレートの香り?書籍の匂いにこだわり続ける研究者の話

本好きであれば誰もが一度は、本の匂いを意識したことがあるのではないでしょうか。
誰の手のあともない新刊本の香りは、その書籍の出版を待っていた人にとっては特別の喜びです。
いっぽう、古書の匂いには新品とは異なる奥の深さがあります。古本屋さんに漂う匂い、図書館の香りなど、場所によっても匂いは異なります。
こうした古書の香りをテーマにした研究が、世界には多く存在しているのです。

修復家や歴史家が感じてきた古書の香り

古書の香りについて触れた有名な作品に、中世の写本研究家として有名なクリストファー・デ・ハーメルの著作『世界で最も美しい12の写本』があります。
デ・ハーメルは「中世イギリスの羊皮紙は温かな革のような匂いがあり、イタリアのそれはよりクールで鋭敏である」と記述しています。詩的で美しい表現ですが、これを読んでもピンとくる人は少ないのではないでしょうか。実際、デ・ハーメル自身も「本の香りを明確に表現するための十分な語彙がない」と同書で語っています。

香りの表現は非常にパーソナルなもので、人によって異なります。まるで、ワインの論評を読んでいるようなこうした表現、いったい研究者たちはどのようにして体系化し研究しているのでしょうか。

古書とチョコレートの関係とは?

古書の香りについて、化学の分野から研究を進めているのがユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのマティア・ストリッチ氏です。
ストリッチ氏によれば、仕事をともにしたアーキビストたちにはごく自然に古書の匂いを嗅ぐという癖があり、それによって書籍の保管状況を判断できたというのです。

そこでまず、ストリッチ氏とアルゼンチン人研究者セシリア・ベンビブレはバーミンガム美術館を訪れた79人の訪問者に、1928年に出版された古書の匂いを嗅いでそれを言葉で表現してもらいました。
「チョコレートのような」「ココアのような」というコメントが最も多く、「コーヒー」「古い」「木のような」「焦げたような」という表現も多くみられました。

化学的に分析すると、チョコレートやコーヒーの香りには理由がありました。
実はチョコレートやコーヒーと経年劣化した紙には、多くの共通する有機化合物が含まれているのです。両者から似た匂いがするのは、この有機化合物のためであると考えられています。一見すると全くの別物に思われる古書とチョコレートの隠れた関係性、意外ですよね。

古書の香りは「好ましい」と思う人が大半

二人の実験ではさらに、ロンドンのセント・ポール大聖堂付属の図書館の入館者に館内の香りについてのアンケートを実施しました。研究者があらかじめ示した21の香りの中で、該当すると思われるものに丸をつけてもらいました。その結果、100%が「木のような」香りを選択、「スモーキーな(86%)」「土のような(71 %)」「バニラのような(41%)」と続きました。

こうした香りの原因の一つが、古書を構成する化学物質であるというのがストリッチ氏の見解です。

ちなみに、この実験ではこうした図書館特有の香りについて84%の人が「とても好ましい」「どちらかといえば好ましい」と答えたそうです。

本の香りで制作年代が特定できるかも?

時代や地域によって、書籍にはさまざまな種類の紙やインクが使用されてきました。経年変化による化学反応には材質ごとに違いがあるため、異なる材料を使用した時代や地域によって当然書籍の香りも変わってきます。
そのため、書籍の香りから出版された年代やおおよその場所を判別することも可能になるかもしれないと研究者たちは期待しています。

数世紀を超えて生き残った本から香るチョコレートの匂い。
古い本といえば埃やカビの匂いをまっさきに想像するかもしれませんが、甘いチョコレートやバニラの匂いの古書なら、一度は手に取ってみたいものですね。

参照
  • https://heritagesciencejournal.springeropen.com/articles/10.1186/s40494-016-0114-1
  • https://www.corriere.it/cronache/17_aprile_26/libri-odore-storia-legno-terra-vaniglia-cioccolato-0b35bc3e-29e9-11e7-9909-587fe96421f8.shtml
  • https://www.theguardian.com/books/2017/apr/07/the-smell-of-old-books-science-libraries
  • https://www.supereva.it/perche-i-vecchi-libri-profumano-di-cioccolato-e-caffe-36508
  • 日本大百科全書 リグニン 小学館刊
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