著者インタビュー

西川三郎様

創作の喜びの裏に潜む苦しみを抱えながら

上梓した達成感はまさに格別。

『瘤』

臨港パークの公衆トイレで発見された、マスコミ界の重鎮・藤原公平の絞殺死体。その胸ポケットには謎の数字が記されたメモが発見された。1週間後、今度は横浜港で日本医師会長・織田五郎の水死体があがった。またもや10桁の番号のメッセージがあり、藤原の番号は織田を、織田の番号は山上代議士を指すことが判明した。この連続殺人の真の目的は? そして最後に明かされる真実とは?

幼い頃より小説を愛し、執筆を続けて、 1996年、生保業界を舞台にした企業ミステリー『凍える豹』でデビュー。ミステリーファンの熱い支持を得た。幻冬舎ルネッサンスから出版した『瘤』は後に幻冬舎から文庫化された。ミステリー小説家として顔だけでなく、企業家としての顔も持つ西川さんに、執筆当時の思いとミステリーを書き続ける理由を伺った。

 

-―新作ミステリーを書き上げた気持ちは?

西川 10年間の企業家としての営為が作品に反映され、登場人物に深みと陰影がでてきたような気がします。 社会に翻弄される人間の痛みと哀しみが掬いとれたかもしれません。今後の作品を紡ぐ糧となったのは収穫でした。しかし、作品をものするには大変なエネルギーを消耗し、「二足の草鞋」を履いている私には過酷な試練であり、創作の喜びの裏に潜む苦しみをかかえながら上梓した達成感には格別なものがあります。企業活動も創作行為もささやかな果実があれば続けていけます。言いかえれば犬は飼い主に頭を撫でてもらうだけでうれしいのです。すべての営為は過去の投影から生まれます。人間はいつしか芽生えたテーマを終生引きずって生きていくことになるのです。やさしくて辛辣な読者から勇気をもらえれば幸いです。

 

-―『瘤』の登場人物は皆、その人なりに真面目に生きています。 そんな普通の人たちを描いた理由は?

西川 市井で真面目にコツコツと働いている人間に魅力があるのです。人間の内面に高尚も下品もありません。外見だけの人間が滅びていくことこそカタルシスだと思っています。ささやかな衣食住さえあれば動物と同じく人は生きていけます。欲というコロモを剥ぎ取れば人間は生身の裸でしかないのです。しかし、その裸には「こころ」という厄介な屈託が潜んでいます。恨み、嫉妬、差別という葛藤が暴れだすと、時として自己制御がきかなくなります。「一寸の虫にも五分の魂」です。人を見下すことは恐いことです。恨みは永く沈殿しています。これはもう復讐というより人間存在そのものに化けていくわけです。真面目な人間のエネルギーは劣等感です。このやるせない感情が凶暴な行動の引き金になっていくのが現実ではないでしょうか。

 

-―ミステリーを書き続ける理由は?

西川 現実はさして面白くはありません。虚構に凝縮された人物は活き活きと動きだし、時に感動さえ与える人間に変貌します。そこに「枷」をはめてやれば、もがき苦しみながらも終末にむかって進んでいきます。裁きという過酷な結果を畏れない衝動にかられるわけです。結末は結果ですが、結果に善し悪しなどあるわけがありません。人は動機で生きているのです。動機こそが人間にそなわっている厄介な代物だともいえるわけです。ミステリーはそれを炙り出す格好の手法だと思っています。人は事件がなければ本性など見せなくても生きていけます。日常生活において人は本性を隠して生活しているわけです。いらぬ社会との摩擦など避けたほうがいいに決まっています。「逃げるが勝ち」を赦さないのがミステリーだと私は思っています。

 

-―ミステリーの魅力とは?

西川 ミステリーの魅力は読者と結託することです。作者はそこに全精力を注ぎ込むわけです。 登場人物の誰一人も無駄には扱えません。仕掛けは完璧でなければなりません。そこに作者の技が問われるのですが、これも読者との協同作業がうまくいかなければ空転します。つまり感情移入と作中人物との同化です。本著『瘤』の主人公たち、事件の展開などに現代を投影したつもりですが、改めて現代という時代が閉塞感に苛まれてきたと思うのは私だけの感慨でしょうか。インターネットや携帯電話という仮想に便利さとは違う無機質さを感じざるをえません。しかし、いつの時代にあっても人間という「一個」がささやかな主人公であることに変わりないのもまた事実です。科学技術の発達は捜査には好都合ですが、犯行には厄介です。でも、そこにまた現代ミステリーの面白さもあるのではないでしょうか。

 

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