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フェードアウト 〜 エッセイ(その3)

エッセイ 【全5回】 公開日
(その1)エッセイ「たからもの」 2020年2月7日
(その2)エッセイ「息子と私」 2020年3月6日
(その3)フェードアウト 2020年4月3日
(その4)ステイホーム 2020年5月29日
(その5)今、思うこと 2020年6月19日

最近私は手痛い 失恋をした。
それもかなり重症の。

思わぬ急展開だった。

ゲームでいえばまさに強制終了。

なんとなくもう潮時なのかな。

そう思ってもいたけど。

これでやっと長年の苦しい片思いから卒業できる。

「知らぬが仏」と言うけど真実を
知ってしまった時のショックといったら…

まさにその瞬間「ドキッ」として心臓が止まるかと思った。

さすがに当日は朝方まで寝付けなかったし。
やっぱり自分でも思った以上にショックが大きかったらしい。

私が片思いをしていた人は、
数ヵ月前に結婚していた。

それを偶然私が知ってしまって。

私の切ない片思いは、こんな形で
あっけなく終わった。

だけど私はあの人に出会えて
本当に良かったと思う。

人はいくつになっても人を好きになれる。

こんなアラフィフになったって。

もうあんなに好きになれる人には、出会えないかもしれない。

それほど好きだった。

単なる「先生と生徒」という関係性でしかなかったのに。

少なくとも彼は私のことを生徒の一人としてしか見てくれず、
女として見てはくれなかったと
思う。

何度か私と目が合うたびに、彼は
サッと目を逸らしたこともあったけど。

一度だけ私の手を強く握りしめた
あの人。

なぜそんなことをしたのだろう。
だから余計惑わされてしまった。

それも今ではほろ苦い思い出。
そう、私と先生の。

彼の個展にも何度か足を運んだ。
私なりに精一杯のアプローチ。

会場に来た私を見て何故かハッとした表情をしていたあの人。

その時私は微妙なモノを感じた。

やれるだけのことはやったし、
もう悔いはない。

彼は私のことをどう思っていたのだろう。
やっぱり迷惑だったかも。

あの人に会うと元気になれたり、
かなりいい影響も受けた。
「私もがんばろう」って。

あの人は私にとって起爆剤のような人だった。

太陽のように明るくおおらかで、
カリスマ性もあって、芸術的才能もある。
何故か人を惹き付けてしまう。

そんな魅力のある人だった。

だから私も離れられなかったし。

本来の習い事よりも彼に会うのが
目的みたいになってた。

初めから私など相手にするはずも
ないのに。

馬鹿みたい。

私もまだまだ半人前だ。

何をしていても涙が溢れる。

今は何もする気がしない。

私は彼を心の支えにしてたから。

いつの間にか私の心の中で、
彼の存在が大きくなっていって。

でももうその想いは、手放そう。

心の中のあの人をフェードアウト
していけるまで

エッセイ 【全5回】 公開日
(その1)エッセイ「たからもの」 2020年2月7日
(その2)エッセイ「息子と私」 2020年3月6日
(その3)フェードアウト 2020年4月3日
(その4)ステイホーム 2020年5月29日
(その5)今、思うこと 2020年6月19日