著者プロフィール                

       

エッセイ「たからもの」 〜 エッセイ(その1)

エッセイ 【全5回】 公開日
(その1)エッセイ「たからもの」 2020年2月7日
(その2)エッセイ「息子と私」 2020年3月6日
(その3)フェードアウト 2020年4月3日
(その4)ステイホーム 2020年5月29日
(その5)今、思うこと 2020年6月19日

ことばとひと。


それは勇気をくれたり、
時にパンチを食らったり。
いい影響を与えてくれたりする。
そのどれもが、いとおしい。

私は日々衰えていく。
いつの間にかアレも卒業した。
そんな私の体は悲鳴を上げてる。


ある日私はひざ痛の特集記事を
頼りに、ある中国人の先生の
診療所を訪ねたことがある。
膝に疾患のある私は、早速先生の
施術を受けた。


その時先生は私に、気さくに
いろいろ話しかけてくださり、
「好きな事をやりなさい」と、
仰ってくださった。


その一言は、今の自分の背中を
そっと押してくれている。


そう、やりたいことをやろう。




私の知人に画家として活動している人がいる。
好きな事をして生きている人ではあるけど、自ら主宰する絵画教室で生徒に絵を教えたり、他に仕事をしながら絵を描いている。


私はその教室に通う生徒の一人で、かねてから彼の生き方に共感していた。
その人を見ていると、
私はなんて中途半端な人間なんだろう、って。
私も「これだ」っていうモノを
見つけずにはいられなくなる。

私は小学生の頃、当時住んで
いた地元の書道塾に通い始め、
小学6年生で2段までになった。
当時塾の先生に「続けなさい」と、言われたにもかかわらず
私はアッサリやめてしまった。
「中学生になると勉強が忙しく
なるから」とか言って。


そして時が過ぎ、私が30代から
40代になった頃。
突如シナリオライターを目指して
シナリオ学校に通ったり、演技の
勉強をしようとタレント養成
スクールに入ってみたり。


そうしてどれもが頓挫したという有り様。
どういうわけか私は、昔から継続することが苦手らしい。


以前私のこうした経歴を人に
話す機会があった時のこと。
その人が、「もしかしたら今までやってきたものの中に、
続けていれば良かったものが
あったかもしれないですね」と言った。
思いがけない言葉。

私は表現したい。
特に 文章を書くことで。
ずいぶん遠回りもしたけど、
これが最後に残った。


好きなことをして生きたい。
なかなか現実は厳しいけど。
私はアラフィフのシングルで、
自分で生活費を稼ぐ必要がある。
当たり前だけど、フツーに働いて稼ぐしかない。



先月まで働いていた所は
まだ契約期間中にもかかわらず、
諸事情で早く辞めることに。
仕事内容もそうだけど、職場そのものにあまり馴染めなかった。


その職場で、印象に残る
ある女性との出会いがあった。
アラフィフの彼女もまた、私と同じシングルマザーだ。
そんな彼女とは仕事で一緒に組む機会がたびたびあった。
「あなたって不思議な人ね」と
彼女はそう私に言った。
それぞれが別の日に、彼女も私もお互いの前で泣き出してしまったことも 。
時に辛辣なことも言われたけど、
不思議と彼女のことは嫌いになれなかった。


最後の出勤日。
彼女から思いがけない言葉が、
「今度の所はちゃんと先輩の言うこと聞くんだよ」って。
私が彼女の言うことを忘れて
注意されたことがあったから。
いつものように心配してくれる
優しい彼女がそこにいた。
「誰も助けてくれるわけじゃないし」と言ってた彼女。


私より少し年下の彼女の方が、
よっぽど年上みたいだった。
彼女のように私も強くなりたい。



私は言葉に敏感だ。
自分が思う以上に人から言われた
言葉に一喜一憂してる。


我が家の息子いわく
「あんまり自分を過信しない方がいいよ。大したことないんだ
から」なんて。
子供ってスゴクよく見てる。



高校時代の女友達からは、
「見ててくれる人、いるから」
と。
たとえ気休めだとしても私は
この言葉にちょっと救われた。


やっぱり昔の友達って、いい。



先日私は求人検索をしようと、
ハロワへ行って来た。
結果は2社とも惨敗。
なんとなくそんな予感がした。
その他にスマホで検索した
アルバイトにも応募した。
そこは面接はしたけど、その日のうちに電話でお断りされて。


やっぱり年齢なのかなあ。
ああ!ヤダヤダ。
今の私、まさに崖っぷち。

何をやっても上手くいかない。
ミスマッチな仕事ばかりして。
やっぱり私しかできないことを
やらなきゃ。


「好きなことをやりなさい」


ずっと心に引っ掛かっていた
あの言葉を、私は思い出した。



自分自身のことを書きたい。
失敗しても何度でも挑戦していく
自分の生きざまみたいなものを。


「こんな人もいるんだ」って
私もだれかの背中を押せたら。


言葉ってそれだけ大きな力を
持ってると思うから。


やれるだけやってみよう。

世間が年の瀬で賑わうころ、
私はある老舗の和菓子店で
数日間アルバイトをした。


慣れない仕事の上、あまり得意とは言えないレジ操作も少し時間がかかる。
ましてや膝の持病もあって、当初の契約よりも早く辞めることにした。


ここも私がいる場所じゃなかったから。
私が私らしくいられる場所。
どこかにきっとあるはず。


この1年あっという間だった。
4箇所職を短期間で転々とし、
1年の最後にフリーになって。
あちこち動き回っていた割には、
何も残らずという感じ。


年末のある日。
和菓子店の制服を返却するため、
出掛けた際に思いがけない事態に遭遇した。


自転車で駅まで向かっていた時、
急にペダルから足が離れて自転車ごと転倒してしまった。
ほんの一瞬の出来事だった。
ブーツの底が滑ったのだと思う。
もちろん私もアスファルトの地面
に叩きつけられた。


こんな経験は生まれて初めてで、
本当に怖かった。


頭を打たなくて良かったものの、
その代わり左の太腿を強打して。
数日経ってもまだ痛いし、それに首も痛めてしまった。
もうヒールのある靴で自転車に
乗るのはやめた。
年明けに整形外科を受診しよう。
どこも悪くありませんように。



いよいよ2020年が幕を開けた。


今年はオリンピックもあるし。
奇しくも私は昭和に開催された、東京オリンピックの年生まれ。
そういう意味でも、ちょっぴり
今年は特別な感じがする。
どんな年になるだろう。

私は人と違うことが嫌だった。
昔そんな時期があって。


今はそうは思わなくなったけど。
離婚したことさえも恥みたいな。
あの頃は潔癖だったのかなあ。
カウンセリングも受けてたし。


いつの間にか私は私でいいって、
そう思えるようになった。

エッセイ 【全5回】 公開日
(その1)エッセイ「たからもの」 2020年2月7日
(その2)エッセイ「息子と私」 2020年3月6日
(その3)フェードアウト 2020年4月3日
(その4)ステイホーム 2020年5月29日
(その5)今、思うこと 2020年6月19日