まっすぐのびやかに生きる子供たちの姿を描いた成長物語。舞台は昭和33年、愛媛県西伊予地方宇和｡町の大衆劇場・宇和劇場の長男・英雄は、弟の太郎や友達とチャンバラごっこをしたり、クワガタや雀を獲りに行ったりと日々大忙し｡まるで遊びが仕事のよう｡そうかと思えば、同級生の女子や綺麗なお姉さんに心をときめかせたりもする｡そんなある日、一人の友が事故死した｡また、両親を亡くしたある兄妹が町を去った｡英雄たちは、「生と死」、「出会いと別れ」が身近にあることを改めて知る。町の皆が家族であるかのような強い「絆」と「愛」に溢れていたあの頃。子供たちはいつだって社会の真ん中にいた。貧しくとも希望を胸に朗らかに生きる人々を、あたたかな筆致で描いた一冊。