出版実績

しゃっくり日和

阿呆やなあ、おとーさん。大事なことは、ちゃんと伝えな。

ジャンル
単行本 文学・評論
シリーズ
その他
著者
・著
ISBN
9784779002915
判型
4-6 ・ 208ページ
出版年月日

内容紹介

母はいつか、父を赦すだろうか。この家族にも、互いに「わたしたち」と呼び合うようになる日が、来るのだろうか。父の「おっきい、わすれもの」が家族をゆるやかに結んでゆく、やさしくてしょっぱい2つの物語。
【しゃっくり日和】
酒乱の父、潔癖症の母、喋ることに怯える半引きこもりの主人公美月。鍋を囲むのも戦々恐々、家族旅行もままならない。“よい家族”を目指すのに、それが悉く裏目に出てしまう。そんな緊張感と失望の毎日を過ごしていたある日、父が倒れた。手術は手遅れ。しかし敗血症で脳を冒されてゆく父を看病するうちに、互いの理解が深まり、暖かな時間が流れる。やがて父を「くろこ」たちが吐き出した糸がくるみ、父は繭に包まれる。最期に父が零し出した虫が父の「死」を示す。
【父の骨が、笑う】
「ただいま、美月ちゃーん!」手袋をつけ白い息を吐きながら、男が美月を訪ねてきた。今は夏だというのに、おかしいではないか。上質のものを身に付けた、いけてるこの男は、一体何者だ? とまどう美月に構わず、家に上がりこむ男。やがて帰宅した母は、その男を「こねこになった、おとーさん」だと言う。「おっきい、わすれもの」をした父の思いが家族をゆるやかに結び、やがて父は母の膝に抱かれながら、蝶になって消えてゆく。それぞれの心に、暖かいものを残して。

■著者紹介
兵庫県神戸市出身。12月31日生まれ。京都大学大学院 人間・環境学研究科博士課程在籍。

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