長い日々をかけて、ようやく刊行できたことに対する喜びで満たされています。
織田信長の13歳下の弟として生まれた、有楽斎。戦国から泰平へと向かう激動の時代に、信長、秀吉、家康という三英傑のはざまで人を結び、幾度もの和平交渉に奔走した。歴史の中心人物たちの間に立ち戦乱の終息に尽くしたにもかかわらず、その存在はこれまで陰にかくれていた。本書は、人と人との対話を重んじ、乱世から泰平への道を静かに支えた有楽斎の実像に迫る一冊である。さらに茶人としても大成し、「客をもてなすをもって本義となす」という精神を貫いたその生涯は、戦国史に新たな光を当てるとともに、現代にも通じる生き方の示唆を与える。
織田有楽斎は、国宝茶席「如庵」を建立した大名茶人として広く知られています。しかしその一方で、武将としての生涯はあまり語られてきませんでした。茶人として語られる晩年の姿だけではなく、有楽斎が乱世を駆け抜けた武将としての姿を紐解いてみたい、“信長の弟”という枠では語り尽くせない、有楽斎という一人の人間の魅力を描きたい、そうした思いが、本書を書き上げる原動力となりました。
―制作を始める前、どんな不安がありましたか?一番の不安は、何よりも有楽斎に関する資料の少なさでした。有楽斎が武将として戦国時代を生きた実像については、残された記録が決して多くありません。三英傑に仕えながら、どのような思いで乱世を生き抜いたのかについて、限られた史料の中から、その人物像をどこまで深く描けるのかが、非常に大きな不安をかかえていました。
―制作の過程で不安を解消できましたか?国立国会図書館や国立公文書館、名古屋市立図書館などに所蔵されている史料を調査し、関係者への取材も重ねました。また、有楽斎ゆかりの地を実際に訪ね歩くことで、書物だけでは見えてこない空気感や時代の息遣いにも触れることができました。そうして断片的だった史実をつなぎ合わせるうちに、有楽斎という人物像に少しずつ迫ることができました。
―制作を進めるなかで印象的だったことを教えてください。断片的にしか残されていなかった有楽斎の記録が、調査を重ねるうちに少しずつ一本の線としてつながっていると感じることができた瞬間が最も印象的でした。歴史上ではあまり語られることのない人物だからこそ、自分自身の手でその人物像を掘り起こしていく感覚があり、とても印象深い体験でした。
―書籍に込めた思いを教えてください。有楽斎は、いわゆる戦国時代の武勇に優れた武将とは言えません。しかし私は、そんな有楽斎だからこそ強く心を惹かれました。争いを収め、人と人との間を取り持ち、和議へ導く人物の存在もまた、乱世を終わらせるうえで大きな役割を果たしていたはずです。本書では、有楽斎の75年にわたる生涯を通して、戦国の世から泰平の世へと移り変わっていく時代の姿を描きました。自分なりの役割を果たしながら懸命に生きた有楽斎の姿から、「本当の強さとは何か」を感じ取っていただければ嬉しく思います。
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