大賞に選ばれたというメールを初めて見た時の衝撃をまだ昨日のことのように思い出せます。
地上の街が海に沈んだ近未来。海底都市で孤独に暮らす高校生のユウキは、年に数日だけ地上へ戻れる“帰省”の季節に、廃れた雑貨屋で「人魚の素」と書かれた奇妙な袋を手に入れる。半信半疑で浴槽に粉を溶かすと、翡翠の瞳と真珠の髪を持つ、ミドリという人魚が生まれた。“人間の都合”が作った世界の片隅で、かけがえのない日々を重ねていく2人だが、ミドリには“消費期限”があった。消えていく時間の中で交わした約束が、胸の奥をそっと締めつける。切なくも澄んだSF小説。
ある日、随分前にスマホのメモ帳に書いた小説の書き出しを偶然見つけて、「へえ、まあまあ面白いじゃん」と何気なく続きを書き始めました。それが数ヶ月後には4万字を越えていて、「せっかくだしどこかに出すか」と、公募サイトを見て直感で選んだのが第6回幻冬舎ルネッサンス新人賞でした。ささやかな祈りと不安、それでもやっぱり読んでほしい気持ち。全ての動機はそこに終着します。
―制作中に大変だったのはどんなときですか?担当編集の方とやりとりをする中で、冗長な部分があるというご指摘を受けました。書きながら自分でも薄々感じてはいたのですが、一体どうやって削ればいいものか……と、下手したら書いている時以上に頭を悩ませたかもしれません。
―制作中に大変だったことをどのように乗り越えましたか?正直、幻冬舎ルネッサンスの方々の丁寧なサポートやアドバイスがなければ、ここまで辿り着けなかったと思います。「やはりプロはすごいなぁ……」と、送られてきた修正案を見ながらいつも驚いていました。メンタル的なことでいえば、好きな曲を流しながら海辺を散歩してアイデアを探ったのと、たっぷり寝たことが一番効果があった気がします。
―制作中によかったと思えたのはどんなことですか?どうしても装丁は完璧にこだわりたかったので、「自分で表紙を描きたい」と無理を承知で担当編集の方にお願いしたところ快諾してくださり、自分の世界観を存分に表現することができました。時間をかけてロケハンから行い、ああでもないこうでもないと塗り重ねた色の痕跡は、今見返しても愛着のあるものです。
―読者へのメッセージをお願いします。生きることは楽しいですか、それとも辛くて悲しいですか。私は両方です。しかし、そのどちらの感情も決して嘘ではないと思います。矛盾だらけの日々と葛藤の中で、絶望の中で、光を掴もうとすること。それこそが生きる指針だと自分に言い聞かせています。喜びも悲しみも祈りも不安も、全てあなただけのものです。誰にも奪えないし否定できない感情を、世界の見え方を、どうか大切にしてくださいね。
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