本棚のある
風景

文庫本カバーの下に隠れている もう一つの表紙デザインやロゴマーク

文庫本の歴史をさかのぼってみると、1960年までは現在のようなカバーは無く、その代わりとなるグラシン紙と呼ばれる透明の紙で包まれ、流通していました。

神田の古本屋街に行くと、いまだにグラシン紙に包まれた文庫本が並んでいるのを見かけることがあります。

各出版社の中でも老舗の岩波文庫は、現在のような文庫カバー仕様に代わるのが他の出版社よりも遅く、透明のグラシン紙越しに見える表紙には、静かで美しいデザインが描かれていました。

現在流通している文庫本も、カバーをはずせば同じようにシンプルなデザインになっていて、そこには淡い色調の紙の上に、タイトル・著者・出版社名・アイキャッチとなるロゴマークが書かれています。

同じフォーマットのデザインの中にタイトルと著者名だけを入れ替えるようになっているようです。

文庫カバーは外してから読む!という読書家の方もいるようですが、普段は見えない文庫カバーの下に隠れている表紙は、透き通って見えることを前提としたデザインから、

決まった仕様に創られたデザインまで、各出版社の個性がシンプルに表現されています。

 

文庫本の表紙の顔 ロゴマークとデザイン

アールヌーボー調の葡萄/新潮文庫

新潮文庫のロゴマークにはShinchou Libraryの頭文字S・Lが、葡萄の蔓に見立てた曲線で描かれています。

ロゴマークのデザイナー山名文夫氏は、少年期からアールヌーボースタイルの影響を受け、彼の手がけてきた仕事には共通した曲線的デザインが表現されています。

葡萄マークのコンセプトは、躍動感ある蔓の先端、軽やかな巻きひげと、豊穣な実りである葡萄が書籍の内容の豊かさを象徴し、葡萄の文様がシルクロード文化によく見られたことから、
文化の交流と発展のイメージを表しています。

 

絵本作家がデザインした太陽と月のマーク/ちくま文庫

ちくま文庫のレーベルは2種類。それぞれ種類別にマークがあり、翻訳、古典、シリーズは月マーク。現代日本の小説、エッセイ、評論、ノンフイクションは太陽マークです。

1985年刊行開始。基本的な装丁は絵本作家としても有名な安野光雅氏がデザイン担当。ちくま文庫を立ち上げた松田哲夫氏の小学校時代の図工の先生が安野氏という縁もあったようです。

安野光雄氏の絵本で育った世代や絵本の好きな方には、どこかで見覚えのあるデザインのマークに目が留まるでしょう。

 

0からの出発、原始人とマンモス/幻冬舎文庫

1997年、幻冬舎文庫本62点・350万部が書店に一挙に並んだ当時は、新しいブルーの表紙に注目が集まりました。

ブルー色のカバーの下には、ロゴマークのマンモスのシルエットが描かれています。幻冬舎の会社ロゴは”槍を高くかざした原始人”。

原始人が岩の上に立って空高く槍を投げる姿がデザインされています。

ロゴマークの意味は、「ゼロから出発して新たな歴史をつくる」。文庫本のマンモスのシルエットと会社ロゴの原始人はひとつの世界観を創って幻冬舎文庫の魅力を引き出しています。

 

飛鳥時代の鳳凰/角川文庫

終戦直後、創立された角川文庫。

創業者は、日本古来の文化に造詣が深く社名を「飛鳥書院」の名で登記しようとしましたが、類似名が他社にあったため、角川書店という現在の名で登録されたという経緯があります。

ロゴマークの鳳凰は、飛鳥時代の鳳凰がモチーフ。

奈良県・岡寺で発掘された、現在の南法華寺が所蔵する鳳凰浮刻塼(ほうおうふこくせん)の拓刷(たくずり)を基にデザインされています。

文庫本の表紙は、洋画家・和田三造氏のデザイン。紫陽花・百合・カキツバタ・芙蓉の花が表紙の両脇を飾り、裏表紙には、鳳凰マークがあります。

 

ポップな葉っぱマーク/講談社文庫

表紙はモノクロストライプ柄のデザインで、表紙上部のロゴマークのモチーフは葉っぱ。

他の出版社の表紙に使われている、自然植物をモチーフにしたデザインに比べると、講談社文庫マークは、ポップな仕上がりのデザインになっています。

東京オリンピックや大阪万博ポスターのデザイナーでもある亀倉雄策氏のデザインから、装丁家・菊池信義氏によるデザインに変更されていますが、基本となる葉っぱのモチーフは変わっていません。

 

文庫本の老舗の壷マーク/岩波文庫

創業者の岩波茂雄氏は、洋画ミレーの種まきの絵をもとに岩波書店のマークとしました。

長野県の農家出身の茂雄にとっての信念は、「労働は神聖である」ということ。晴耕雨読の田園生活を好み,詩人ワーズワースの「低く暮し,高く思う」を社風にしたいという想いからマークは創作されました。

文庫本表紙の植物や鳥をモチーフにした唐草模様と壷マークは、日本画家・平福百穂氏のデザイン。

岩波文庫の表紙は、他の出版社が文庫カバーを導入した時代のものと同様のデザインが変更されず、そのまま今でも使われています。

透明紙からも見える唐草模様は、文庫本の老舗ならではの風格があるデザインになっています。

 

建築家のデザイン大きな鳥/中公文庫

日本の建築家・白井晟一氏のデザインした鳥は、表紙の中央に大きめのシルエットの鳥が描かれているのが特徴的です。

建築家である白井は、山本有三の著書『真実一路(新潮社)』をはじめ、多数の装幀デザインを手掛けています。

彼の建築設計を手がけた別荘が、中央公論社の社長宅であったことや

自著作品の出版元が中公論社であったことなど、文庫本表紙のデザインを手掛けるまでに、中央論社との縁がありました。

 

個性派文庫のふくろう/河出文庫

玄人ごのみの作品がそろっている河出文庫。

文庫の表紙も個性的なふくろうマーク。グラフィックデザイナー粟津潔氏のデザインです。

創刊から現在まで何回かリニューアルされてきた表紙ですが、いずれも粟津潔氏によるものです。

最近ではこのふくろうマーク入りのトートバッグや布製ブックカバーなどのキャンペーン商品も開発されています。

 

最後に

現代はイラストの入ったカバー付きの文庫が当たり前になっていますが、
過去にはグラシン紙から通して見える、一律のシンプルなデザインの文庫本が、多数出回っていました。
これらの表紙はシンプルとはいえ、著名な画家やデザイナー、建築家らのアイディアが盛り込まれており、小さなロゴマークにも各出版社の想いが詰まっています。

時にはカバーを外して隠れたデザインを眺め、過去の歴史に思いを馳せながら読書してみてはいかがでしょうか。

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