作品
作品紹介
動きと意識
西園 孝
人だけに備わる、無自覚な動きの驚異
脳や筋肉を使って人はどのように動くのか。その時、意識はどう働いているのか。コップを取る、自転車に乗る、パソコンを使うといった日常動作に隠された人体のメカニズムの不思議をひも解く。
Ⅰ 動きと意識のダイナミクス
人はいつも動いている/動きの基本的な考え方/ジェスチャー/意味のない動きとは/動きの分類/随意運動と不随意運動 他
Ⅱ 脳と運動の相互作用
行動選択と意思決定/動きの記憶と脳部位/行動プラン、プログラム/車の運転の運動プログラム/運動イメージ/スキーマ理論 他
プロフィール
西園 孝
県立浦和高校卒、山形大学医学部卒、三岳荘小松崎病院非常勤
好きな曲:Hey! Say! Jump 「Dear My Lover」
好きな俳優:吉沢亮
カラオケでうまく歌いたい曲:Mrs. Green Apple 「ライラック」
私はハゲカッパ、お茶の水はかせ、などといわれます。川に入るようスタッフに指示されるのはこのため。
書籍に対する想い
有名なイルカさんの「なごり雪」という曲の中に、(君の唇が「さようなら」と動くことが、こわくて下を向いてた)というフレーズがあります。これは、「さようなら」という音声が耳から聞こえるよりも、「さようなら」という唇の動きを視覚的にとらえるほうがはやく認識されるので、そちらを先に阻止したという意味とも解釈できます。このことからも動きをとらえるということの重要さがわかります。
また私が好きな卓球は、100m(?)を全力で走ってからチェスをする競技といわれますが、アスリートにとって、自分が打った球が相手から返ってくるまでに約600ミリ秒(0.6秒)といわれ、このごく短時間に、次にどのような返球をすれば勝てるかを考えて球を打つわけですが、相手が打ってきた球にまず全力で飛びついてから(相手が打ってから約300ミリ秒⦅0.3秒⦆しかないので、中心視野でじっくり球を見ている余裕はありません)、次にどこにどのように球を打ち込めば相手が打ち損じるかを、飛びつきながらも瞬間イメージして(行動イメージ)球を打つわけですが、この時相手の動きや心理の予測をしながら、相手が返球しずらい、読めないところに球を打ち込めば有効なわけです。
この心理戦においては、数100ミリ秒という短時間を制することが勝利のカギとなります。卓球以外のスポーツでも、このようにごく短時間での動きの制御というのは必要でしょう。この本はこれらのような「動きの認識」をご理解いただくという点においても、お役に立てるものと考えております。
ちなみに私自身はスポーツを何もやっていなかったので、卓球のように(球技に限らず、格闘技のようなスポーツでもそうですが)、一対一で相手と対戦する競技での心理戦のかけひきというのが、今すごくおもしろそうに思えて、自分も何かスポーツをやっていればよかったなと後悔しています。
ところで最近AIでヒトの機能に迫るというのが話題ですが、ヒトの認識機能でまだまだ解明されていない部分があり、今後の検討が期待されるところと思います。
書籍に関して
動き、動作などの領域についてご興味のある方、学ぼうとされている方(専門を目指すかたも含め)、難しい本をたくさん読むより、動きと脳機能との関係が簡単にある程度これ一冊でわかります。ぜひお読みいただきたく思います。
座右の一冊
マインドタイム、意識の時間
著:ベンジャミンリベット
この本は簡単に言うと、皮膚を触られたと人が感じるために、実験では脳で500ミリ秒(0.5秒)かかっているはずなのに、実際には触れた瞬間に感じているという実験結果との矛盾と、人が動こうと意識する前の350―400ミリ秒(0.35―0.4秒)前に、すでに脳はその活動を開始しているという、理解が困難な実験結果について書かれています。いまだにこれらのことの真の理由はわかっていません。私はもともと心理的なことも含め、「意識されている内容」について考えることに興味がありましたが、この本を読んで、感覚、知覚(感覚の意味付け、解釈)などと、それらの時間的な前後関係にも興味が出てきました。これらの意識内容は日常で一瞬ごとに次々と変化していくものだということが、自分なりによくわかった気がします。
人生を変えた出会い
高校の同級生のM君はクラシック音楽が好きで、彼に感化されて私もクラシックを知り、今でも好きです。また当時彼が読んでいた少年サンデー連載の「東大一直線」を私も読み、今でもギャグマンガの最高峰と考えています。ギャグマンガは最近少なくなっている印象があるのですが、私は大好きです。

