表現者の肖像 村松紀梨湖
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執筆に秘めた思い

会いや別れによって多くを学び、がんで余命三か月と宣告されて、自分にも使命があるということに気がつきました。その使命とは、今回がんになったことによって与えられたたくさんの気づきや経験をできるだけ多くの方に伝えることであると思っています。「がんでは死なない!」「副作用で自分はこうはならない」「私はなんて幸せなんだろう!」と、言葉にして脳にインプットすることで、目に見えない力が宿ると強く訴えたいです。
 私はがんを患う前は「自分はがんにはかからない」と思っており、それにもかかわらず「がんは他人がつくったものじゃない。食べた物、習慣、ストレス、心が、正常な細胞を狂わせたのよ。自分のことを大事にしていなかったでしょ。だからまず自分の体にできたがんに謝っちゃって。そして気づかせてくれてありがとうって言ってね」と周囲にアドバイスしていたのです。なんて尊大であったのだろうと思います。そんな私はがんになり、知らずのうちに多くの人を傷つけていたと気がつくことができました。自分が患うことで心から「がんちゃん、ごめんなさい!」と思ったのです。真剣に謝り、感謝をすることで、気持ちが軽くなり、許せなかった自分も含めてすべて許せるようになれた気がしました。それからというもの「がんちゃん、私の体の中にいていいのよ。でもこれ以上悪くなると、私も働けなくなるから、いいこにしていてね」というように、一日に数秒ほどがんと対話をすることで、がんも小さいままでいてくれており、転移もしていません。もちろん、一方通行の会話です。私のがんは聞きわけがよくて、「体重を減らさないこと」と「脱毛しないこと」の二つの約束を守ってくれました。「この人は何をバカなことを言っているのか?」と思われる方もいらっしゃることでしょう。しかし自分のがん細胞と向き合って会話をすることはお金もかからないですし、誰でもできます。潜在意識に働きかけて、免疫力が高まると信じて欲しいのです。その「思い込む力」とストレスや合わない治療などのマイナス要素を「跳ねのける力」が病気と対峙するときに重要なのだと思います。
 私自身は何の能力もありません。ただがんと会話して自分の中の何かが変わり、眠っていた可能性や自然治癒力が引き出されたことを実感しました。この激動の一年半の間で私が経験したことを少しでも早く皆さんにお伝えして、「がんでは死なない!」とわかっていただき、たとえがんにかかったとしても、前向きに、普段と同じように過ごしていただきたいという思いをこめました。


友人たちと書籍を手に

幻冬舎ルネッサンス

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