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天声人語にならう上手な文章の書き出し方/小説の書き方講座

 

読者を引きつける文章の書き出しポイントを前回前々回に渡りお伝えしてきました。その中で様々な例題を挙げましたが、参考になる文献を見つけるのは意外と難しいものです。

そこで今回は、書き出し方の学習に役立つ身近な活字メディアを題材にし、学んでいきたいと思います。

 

『天声人語(てんせいじんご)』をご存知でしょうか。

朝日新聞の朝刊で長期間連載されているコラムです。話題の出来事について朝日新聞の論説委員が匿名で執筆しており、社説とは異なる独自の視点で書かれた内容が人気を呼んでいます。
そしてこの天声人語の書き出しが、非常に参考になるのです。いくつかの文頭を抜粋してご紹介しますので、どんな書き出しパターンがあるのかを知りましょう。

 

文章の書き出しパターン(1) うんちくで始まる

 

天声人語ではよく、物事のうんちくから文章を書き出すパターンが見られます。まずは以下の例文を読んでみてください。

 

『衆院定数是正で汗を流せ』
汗をかくという言い回しが、苦労するという意味で使われることがある。特に政界でよく聞く。与党が野党の合意を取り付けるために説得を重ねる。頭を下げる。かつては酒食の接待をするなど、よくない汗が流されたこともある

『命ひしめく春に』
春告鳥(はるつげどり)がウグイスなら、春告虫はさて何だろう。思いめぐらせばモンシロチョウが頭に浮かぶ。菜の花畑をはずむように飛ぶ姿は、旧仮名で表す「てふてふ」の語感がよく似合う

 

これらは天声人語の文頭を抜粋したものです。誰もが知っている言い回しや呼び名の話で始まり、「実は違う意味があって…」とうんちくを披露したり、「それじゃあこっちはどんな意味でしょう」と似たものを引き合いに出して考えさせる書き出しです。

上記のように『政界』など馴染み難い話題でも、誰もが知る“汗をかく”という言い回しを先に見せておいて、それに絡めてうんちく風に説明すると、親しみやすい文章になりますね。

説明が難しい話題について書く場合は、このように読者を想定し、工夫した文章に仕上げたいものです。

 

文章の書き出しパターン(2) 他人の事例を引く、言い伝えを書く

 

次は以下の文章を読んでみてください。

 

『沖縄との和解は何だった』
押してもだめなら引いてみよとは、交渉ごとの骨法としてよく語られる言葉だ。その永田町版といおうか。「たたいているようでさすっている。さすっているようでたたいている」というのがある。

『夢か脅威か人工知能』
碁を愛し、「名人」という小説を残した川端康成は「碁ほど精神を集中し、沈潜するわざはほかにない」と言っていた。

『閣僚たちの失態と傲り』
ものごとがうまくいって得意の絶頂にある人が、自分を過信し、神をも恐れぬほど傲(おご)り高ぶる。こういう状態をギリシャ語でヒュブリスというそうだ。

 

これらはいずれも、他人の事例を引用したり、言い伝えられてきたこと(伝聞)から書き出しています。著名人の言葉や言い伝えを出すことで、まずそれらを読者の心に落とし込み、頷かせ、そして「昔と比べて今はどうだろう?」「別の●●(人や物)に置き換えたら、本当にその通りになるだろうか?」と否定的な意見を述べる際に役立ちます。

うんちくと少し似ていますが、引き合いを出すことで、後に述べる意見の否定性をより引き立たせていることが分かります。

 

文章の書き出しパターン(3) 理想と現実

 

最後はこちらです。

 

『戻れない故郷を子や孫に』
春は満開のサクラ、夏は闇を彩るホタルの群舞。四季の美しい光景が次々あらわれる。しかし、それらの写真に人は写っていない。ページをめくると、餌の根茎を求めて土を掘り返すイノシシや(以下略)

『女性が働きやすい社会へ』
「仕事をして結婚して子供を産んでも、やっぱり仕事をしたい」。慶応、早稲田、お茶の水女子の各大学に通う女子学生3人が、働きやすい社会づくりに向けた政策を提言すると(以下略)

 

こちらは分かりやすい書き出しです。まず始めに理想の状態を見せておいて、そこから現実を書いて「えっ?」と思わせたり。簡単には叶わないと分かっていても、多くの人々が理想としている状態を見せることで、その後の問題提起を示しています。
理想と現実、その両方を書き出しにまとめることで、読者に様々な連想をさせることが出来ますね。

 

以上、書き出し方の3パターンをご紹介しました。
今回は天声人語を事例として取り上げましたが、新聞を始めとした活字メディアは、読者を引きつける文章を書きなれたプロ達が執筆しています。他にも参考になる情報がたくさんあるはずですから、積極的に読んでみてくださいね。

(出典:すべて朝日新聞社『天声人語』

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