表現者の肖像 柴田和夫
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未来へのメッセージ

ニューヨークのセレブが住むアッパー・イーストに、わびさびを感じさせる茶室のある裏千家の「茶の湯センター」があります。
そのセンターの入り口付近には、「親の恩は返せても水の恩は返せない」と書かれた色紙が飾られています。

当時、在NY総領事館広報文化センターに働いていた私は、茶の心をアメリカの人達に理解してもらうべく、当時の山田尚茶の湯セ ンター長にお茶のお点前と茶の心の講演をお願いしたことから、山田さんと親しくお付き合いするようになりました。

山田さんからは、お茶に関して種々ご教授いただくと共に着流しでNYの街を闊歩するその姿からは、まさに、日本文化を体現せんとする意図も汲み取れ、そのお姿に感銘を受け、日本文化に関する自分の無知を悟ると共に日本文化に関する深い勉強の必要性を感じました。
映画監督の小津安二郎は、「日本的なものこそが最も世界に訴える」としておりますし、東北銀山温泉の若女将であったジェニー藤井さんも、「日本人には日本が足りない」としていたことを思い出します。

私も含め日本人は、神道や仏教を始め、能、人形浄瑠璃、華道、短歌、俳句等日本文化をきちんと勉強する必要があると思われます。
それは、単に偏狭なナショナリストを目指すためでは決して無く、自分の国の文化を知り、愛することは、他の国の文化理解にも繋がっていくことになると思っております。

最近異常気象について喧しくいわれておりますが、上述の「親の恩・・・・・」の標語は、地球環境問題を考える上でも非常に重要な考えではないかと考えます。

全くの余談ですが、「自然」をタイ語に翻訳しますと「タンマ・チャート」となります。
タンマ・チャートとはタンマ(達磨と同じ意味で規範とか法律の意味もあります)が存在しているチャート(世界)ということで、意訳するならば、「ある法則が働いている世界」とでも訳すことができるかと思います。
日本語の自然という漢字からは、その意味するところが良く理解できませんが、タイ語から見てみますと、自然の意味するところが一目で理解できるような気が致します。

私達は、そのある法則働いている自然という大切なものを破壊するような行為・行動を厳に慎むことだけではなく、どうしたらその法則が円滑に進むかについても留意する必要があるのではないかと考えます。

幻冬舎ルネッサンス

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