シナリオ大賞

大賞作品電子書籍化

大賞

『暁の革命』

赤塚一誠:著

【大賞作品 幻冬舎ルネッサンスより電子書籍化】

■あらすじ
日本政府に対し抵抗を試みる、東京大学「全共連」。ミュージシャンを目指して広島から上京した浜田拓郎は、偶然見かけた全共連の活動で東京大学4年生の田島淳子の美貌に魅せられ、他大学生でありながら全共連の集会へ通う。
一方で、共産主義革命を目指す淳子の活動は過激さを増し、家族から勘当されてしまう。その後、牧村、三宅らが率いる過激派「赤軍」へ所属したことで、状況は急速に悪化していく。音楽を通じて淳子への愛を表現し、学生運動の過激さから解放しようとする拓郎の思いは届かず、淳子は赤軍派山岳ベースキャンプへの参加を決意する。諦めきれずに後を追う拓郎。そして二人の関係性は、互いの過去や思想を共有することによって変化していく。
淳子の計らいによって、拓郎はミュージシャンになるという夢をかなえるため、レコーディングスタジオへと向かう。淳子はさらに、「米軍のあやつり人形と化した日本政府への反抗」という大義のため、牧村の待つ山岳ベースキャンプへと向かう。しかし、淳子の向かったベースキャンプ場では、革命闘争とは名ばかりのリンチ殺人が繰り広げられていた。
学生運動の盛んな1970年を舞台に拓郎と淳子の関係性を描き、学生らしい情熱を感じさせる青春小説。

大賞作品『暁の革命』
編集者講評

学生運動をテーマにした本作品。若い学生たちの勇敢な姿に鼓舞される思いで胸がいっぱいになります。読者は、当時の大学生たちが国や政治を変えるべく、自らの命を投げ打ってでも運動を勃興させた勇気に感服の念を抱かざるを得ないでしょう。文学作品の中でも、学生運動にまつわる作品は多く目にします。しかし本作品は、他と一線を画し、描写が非常に緻密な点が見事です。当時の学生たちの思想や、それに伴う人間関係の錯綜に強く興味を引かれました。タイムスリップしたような感覚に陥り、現代においても同じように、何かを変革したい強い気持ちに駆られることでしょう。
本作品の魅力は、文章構成がしっかりとしていることです。場面の切り替えが明確になっていることで、描写と気持ちを連動させて読むことができます。シナリオでは、場面描写の切り替えが重要です。曖昧な切り替えではなく、固有名詞も連動して、しっかりと話が展開していく点に、作者の創作力の高さを窺うことができます。また本作のもう一つの魅力はやはり、登場人物の心情描写です。学生運動を行う傍ら、彼らが抱える憧れや恋心には共感の念も抱くことができます。作者の観察眼が光っている作品だと強く感じました。

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