– 編集者としての経歴を教えてください。
小暮:幻冬舎ルネッサンス新社に来るまでは、スポーツ専門誌の編集者を16~7年やっていました。その時は自分で執筆もしていたので、選手など言語化が本職ではない方たちの言葉を読者に分かりやすく伝えることを大切にしてきました。“伝えること”を“伝わること”にするイメージですね。

– その経験が幻冬舎の個人出版の編集者としても生かされているんですね。
小暮:そうですね。著者様が伝えたいことを、いかに読者に伝わるように表現していくのかというのは同じだと思います。また、編集者というのは正確性が求められる仕事だと思っています。文字表現はもちろん、デザイナーや校正者、印刷会社をディレクションしていく立場にあるので、スケジュールというところでも正確性は大事にしながら携わっています。
– 個人出版において、編集者はどのようなサポートをするのでしょうか。
小暮:基本的には、コミュニケーションがすべてだと思っています。著者様によって、編集者に望んでいることがバラバラなんですね。すでに原稿が完成している方もいれば、途中段階の方もいます。その中で原稿の整理、表記統一さえしてくれればいいという方もいますし、構成の部分から見てほしいという方もいるんです。そのニーズをいかに把握して応えていくかが、個人出版における編集者だと私は思っています。そのためにもコミュニケーションをしっかりとった上で、具体的な提案をしていく形になります。

– 幻冬舎ルネッサンス新社だからこその特徴はありますか?
小暮:マーケティングには力を入れていて、自信を持っている部分です。出版社だけがアクセスできるビッグデータを分析した上でタイトルや内容などを提案することが可能です。さらに、タイトルや帯文は、一番経験の長い社長が目を通して精査しています。
また、流通面では幻冬舎が築いてきた書店との信頼関係があります。特約店契約というのを幻冬舎グループとして結んでいて、個人出版の本でも幻冬舎の著名作家の本と同じように扱っていただくことになっているんですよ。なので、個人出版の本でも全国の書店にまんべんなく、かつ優遇して置いてもらうことができる。ジャンルの棚に並ぶこともできるので、書店に足を運んだ方の目に留まりやすくなります。他の自費出版社さんは、1つの棚を買い取ってジャンル関係なく並べるケースが多いんです。

– その分、本のクオリティーが問われそうですね。
小暮:そうですね。だからといって、最初から完成度を求めるわけではありません。中には、会話文はカギ括弧で閉じるというような文章のルールを知らない方もいらっしゃいますが、テクニックの部分は編集者がいくらでもサポートできます。それよりも、その方のオリジナリティー、その人自身の表現があることが大切だと思っています。その人が何を体験してきて、何を見てきたのか。大げさにいうと、その人の人生からしか言葉や表現というのは出てこないと思うんですよ。いろんな人柄や人生の体験談に触れられるのが、自費出版の面白さだと感じています。
そこを大切にした上で、書店さんとの信頼関係をつなぐためにも、1人の著者様に対して1人の編集者が必ずついて、営業やデザイナーなど5~10名の制作チームを組んでサポートします。著者様の満足度を高めながらクオリティーも高めていくというのが、私どもの強みだと自負しております。

– 現在、どのようなジャンルの応募が多いんですか?
小暮:ジャンルとして多いのは小説やエッセイなどの文芸ですね。自分の人生を小説仕立てにする私小説も多いです。個人的には、実用書やビジュアルブックが得意なので、そういう分野で相談していただいても面白いんじゃないかと思っています。例えば、会計士さんや弁護士さんなど士業の方が出版を通してご自身をブランディングして、講演依頼を増やしたり新規顧客を獲得したりといった成功事例もあります。そういうビジネス系や実用書も、個人出版の可能性という意味ではあると思います。

– では最後に、出版を考えている方にメッセージをお願いします。
小暮:「いずれ出したい…」という気持ちがあれば、一歩踏み出してほしい思います。締め切りというのは書き物では重要で、締め切りがあるから書けることが多いんですよ。
だから、まずは一歩踏み出してもらって、ご相談いただきたいですね。原稿が途中だからとか、クオリティーに自信がないという方も、ある意味ステップアップとして使えると思います。自分だけで書いていると視点がどうしても主観的になってしまいますが、編集者は作品の最初の読者として客観的な視点を提供することができる。そういうサポートによって作品がどんどんブラッシュアップされていくし、著者様が見える表現の世界もどんどん変わっていくんです。編集者とともに作り上げる有用性を、ぜひ体感してほしいです。