大賞作品
電子書籍化
『旅路』荒木麻紀:著
【大賞作品 幻冬舎ルネッサンスより電子書籍化】
『旅路』
(荒木麻紀・著)
■あらすじ
わが子を失った母親、由里。母親と生き別れた少女、沙羅。大切な人に置いていかれた2人が出会い、不思議な縁を深めていく物語だ。
二人が出会ってほどなく、由里の夫が交通事故で亡くなるという事件が起こる。突然の悲劇に打ちひしがれる由里。
その後、彼女達は由里が「夢に視た」場所、賽の河原へと赴くことを決める。
大切な人を失った二人が、この旅路の果てに見つけた答えとは。
世界に取り残された人間が、前を向いて生きていけるようになるまでの過程を描いた、物語。
大賞作品『旅路』
編集者講評
繊細な心理描写と静謐な文章が心を打つ作品です。
構成も巧みで、冒頭からしっかりと読者を引き込むことに成功しています。
日がな一日「骨」を眺め続ける妻。知らない番号から掛かってきた「母ですか?」という電話。こうした奇妙な状況で読者の興味を引きつつも、中盤までは静かで情緒的な展開が丁寧に綴られていきます。そして丁度物語の半ばを過ぎたあたりで、夫の死という衝撃的な展開で後半の物語へと突入していきます。
作劇のお手本のような、非常に完成度の高い作品と言えるでしょう。
愛する者を失った悲しみを描くことで、愛ゆえの苦しみと、それを乗り越えて生きていくことの尊さを描いた傑作です。