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はじめての講演(作家:山口紀美子)

 

『奪われた若き命 戦犯刑死した学徒兵、木村久夫の一生』の著者によるコラムです)

前回のコラムはこちら「『奪われた若き命』に寄せられた感想

 

 

2016年2月28日、わたしは植田公民館(福島県いわき市・勿来)の3階にいた。生まれてはじめての講演を行うためだった。
この講演は植田公民館まつりの行事の1つ、「平和のための勿来の16戦争展」として企画されたものだった。27日からの展示物には戦争とかかわる品々と共に、“朝鮮人戦時労務動員被害者”と話した記録もあった。これは実際に、国を訪問して被害者と会うことで得られた貴重な資料だった。

 

わたしの講演は2日目で、「戦争体験を聴く会・次世代に伝える歴史」として企画された。この行事は「勿来の戦争展」として知られていて、以前従軍看護婦だった方も話されたことがあり、この時のチラシはわたしも目にしている。
戦争展の主催は、サークル「平和を語る集い」で文集『戦争と勿来』を年1回発行している。

 

この歴史ある「勿来の戦争展」で今年はわたしが講演することになったのである。
きっかけは『奪われた若き命』を読まれた友人ご夫婦から依頼されたことにあった。はじめてのことで電話の前で一瞬緊張したが、新しい体験を大事にしようと、その申し出を受けた。

 

準備に取りかかって難問題にぶつかった。それは、「書くことと話すことは違う」ということである。書く場合はレジメを作成してそれに従ってすすめていけば堅苦しくなるように思え、そこではじめて話すことのむずかしさに気づかされたのである。
しかしこのことは心配だけで、安堵と喜びを胸いっぱいに感じて、講演を終わることができたのである。

 

内容として木村久夫さんの略歴と読書、イギリスの戦犯裁判などを柱とし、子どもの頃のひょうきんな一面を示すエピソードをくわえた。裁判の場面などは特に堅苦しくなることが予想された。
しかし、どのような内容も会場のみなさんは、真剣な表情で受けとめて下さった。話しながらわたしは、「おひとりおひとりの視線が自分を落ち着かせている」と思った。真剣さと温かさ、それが話し手にとってどんなにありがたいかを身をもって感じた。
およそ1時間30分の午後のひとときは、わたしにとって生涯忘れることのできない時間になった。司会の方がはじめに『きけわだつみのこえ』を示され、「山口さんはこれを読んで」と言われたとき涙があふれそうになった。木村さんを思ったからである。

 

 

 

■著者紹介
『奪われた若き命 戦犯刑死した学徒兵、木村久夫の一生』(山口紀美子・著)
1941年、日本は大東亜戦争(太平洋戦争)に突入する。日本では多くの国民が徴兵され、戦場に向かうことになった。そんな時代に行われた学徒出陣で徴兵された若者たちの中に、木村久夫という一人の青年がいた。
終戦後、戦地であったカーニコバル島の島民殺害事件に関わった人物として、木村久夫さんはイギリスの戦犯裁判にかけられ、死刑を言い渡された。その時木村さんが書いた遺書は、学徒兵の遺書をまとめた『きけわだつみのこえ』に収録されたことでよく知られている。
その『きけわだつみのこえ』を読み、木村久夫という個人に心惹かれた著者は、木村久夫さんの妹、孝子さんと何年も文通を重ね、木村さんのことをさらに深く知っていった。その後、孝子さん夫妻と実際に何度も会い取材を重ねていく中で、著者は木村久夫さんが歩んできた人生の足跡を辿っていくことになる。

 
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