著者は台湾の花蓮出身で、鹿児島大を卒業した開業医の柯尚志（こう・しょうし）氏です。
本書は柯氏が上海中医薬大などで学びながら編み出した遠絡療法について紹介したものです。
著者の研究の出発点となったのは「痛み」で、様々な鎮痛剤は一時的な疼痛抑制には効果を発揮したものの根本的な治癒には中々至らず、より良い手段を求めて試行錯誤が始まりました。
そして痛みを「局所の障害」と、脳脊髄に生じた「中枢性の障害」の２種類があると考えました。
治癒が難しいのは後者で、一般医療では局所に囚われて原因となる中枢へのアプローチを行なっていないためだとしています。
中枢に対するアプローチということなので、評者は脳・脊髄に何らかの施術を行なうのかと思っていたのですが、著者のメソッドは、ツボ押し棒のようなものを著者の指定する手足の２ヶ所を押すというものでした。
例えば「右」五十肩なら、「左」の足首内側と下腿内側の２ヶ所を押す、といったものです。
その理由として「ライフフロー」という中国医学の「経絡」を思わせるラインを刺激するためだとしていました。
しかしそのツボを選ぶルールやこの遠隔部位の刺激が中枢に対してどのような機序で影響を及ぼすのかについては記載がなく、よくわかりませんでした。
また、痛み治療に留まらず、この療法の未来の方向として、様々な不定愁訴や癌やパーキンソン病など難治性疾患に適応する可能性を示唆していました。
一般向けの限られた誌面のためか、当初予想していた情報は得られませんでしたが興味深い療法だと思います。
学会が組織され、専門家向けの書籍もあるようなので、機会があればそちらも手に取ってみようと思います。
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