この本は、1937年7 月7 日の盧溝橋事件と8 月13日の第二次上海事変が誰によって起こされたか、誰が和平工作を妨害し支那事変( いわゆる日中戦争) へと発展させたかを明らかにしている。
盧溝橋事件は、北京議定書に基づいて公使館や邦人の警備のため北平( 北京) に合法駐留していた日本軍に対する蒋介石軍からの発砲から生じた事件である。北京議定書は、1900年の義和団の乱( 扶清滅洋運動から生じた清朝からの宣戦) を制圧し公使館に籠城した人々を救出するために派兵した英米仏独露日などの8列国との間で締結された議定書である。盧溝橋事件を理解するには、北京議定書締結以後、第二次大戦終結まで、治安維持のため支那において各列国の合法駐留があったことを理解しておく必要がある。
さて、本書は、盧溝橋事件が中国共産党により仕掛けられたことを、7月8日に発信された、中国共産党中央委員会から各新聞社、中国国民党、国民政府等宛、毛沢東、朱徳等の紅軍指導者から現場最高指揮官宛、紅軍指導者から蒋介石宛の3つの通電から明らかにしている。
中国軍から日本軍に向けて最初の発砲があったのは7日の夜半10時、日本軍が、その後の挑発に対して隠忍自重の後反撃したのが翌朝未明の午前5時半であった。この時には、両軍は、実は、最初の発砲の事情は良く分からなかった。にも関わらず、8日付の3つの通電は、「宋哲元司令官に29軍全軍の前線への総動員を要求し、南京政府には、直ちに全国民衆の愛国運動と民衆の抗戦士気を発揚し、日本侵略者のスパイを一掃し、和平に反対し、全国民が全力を挙げて神聖な抗日自衛戦争を支援するように要求する。」という趣旨のものである。このことからも明らかなように、通電は、衝突を最小限に抑えて和平を希求したものではなく、戦争に導き、闘争を煽り、「血の一滴まで」戦うことを執拗に訴えたものであった。
著者は、事情が判明する前の8 日の段階で、直ちに、このような文書を作成して通電することは不可能であり、判明している事実と通電の記載事項とから、最初の発砲前から通電文書が準備されていたことを立証している。
盧溝橋事件の後、第二次上海事変までの間、日本軍は不拡大の方針の下、13日の大肛門事件、25日の廊坊事件、26日の広安門事件、29日の通州事件(230名の日本人虐殺と凌辱) と、中国軍による日本人虐殺と挑発が繰り返された。
日中の恒久平和が成立する可能性が極めて高く中国側にとって極めて有利な船津和平案が協議されたまさにその日8 月9 日に、上海で中国兵により大山勇夫中尉と斉藤一等水兵とが惨殺され、和平協議は不成立となった。著者は、この事件は偶然ではなく和平成立を妨害するためであった主張する。
8 月12日、中国軍( 張治中) は、共同租界の日本人居住区域を包囲し、13日に日本軍陣地に射撃を開始、14日には日本艦隊を爆撃した。こうして支那事変が勃発した。このとき、中国軍はドイツ軍事顧問団により武器の提供と戦略指導を受けており、日本軍は6300名、中国軍は7 万名であった。明らかに支那事変は中国軍により引き起こされたのである。
第二次上海事変前の船津和平協議、12月13日の南京陥落の後の和平工作が、ことごとく失敗した背後には、日中の和解を阻止し、国民党と日本とを戦争に引きずり込み、最後に中国共産党が勝利を得るという中国共産党、世界共産主義革命を浸透させるスターリン、そして近衛文麿首相の共産主義者側近の活動があった。
まず、第二次上海事変を起こした張治中は蒋介石配下ではあるが、共産党の戦略を遂行するために国民党に送り込んだ要員と言える。戦後、蒋介石は毛沢東に敗戦するが、張治中は短期間で共産党の常務委員会副委員長に登り詰めている。このことからも中国共産党の和平妨害と戦線拡大の策略があったことは明らかである。
次に、日本においては、近衛の側近である内閣書記官長の風見章、元朝日新聞記者尾崎秀実、西園寺公一等の朝飯会のメンバー、それにソ連のスパイのゾルゲの暗躍がある。貧困状態にある当時、政府要職と軍部には、共産主義に共鳴し、共産国家革命に夢を抱いていた人物が多い。尾崎はゾルゲ、スメドレーと関係があり、国家秘密漏洩罪で逮捕され処刑されている。
上海事変後、南京陥落前に、日本からの調停依頼による駐華ドイツ大使トラウトマンによる和平提案を蒋介石は拒絶している。また、日本は米国にも蒋介石に和解を奨めるように依頼している。和平を希望せずに南京戦を意図したのは蒋介石である。南京陥落後も、日本はトラウトマンを介して和平提案を蒋介石にしているが、蒋介石はこれを拒否している。
そして、ついに、近衛内閣は、蒋介石には和平に対する誠意がないとして、1938年1 月16日に「爾後国民政府を対手にせず、振興支那政権を支援し国交の調整を協定し更生新支那の建設に協力す」との声明を発した。この声明の起案に、書記官長の風間章が関与している。風間章は、盧溝橋事件直後の石原莞爾による近衛・蒋介石の直接会談をも潰している。風間章は、戦後、社会党左派の国会議員になっている。
以上のことから、支那事変の拡大には、中国共産党、日本政府側近及び米国政府側近の共産主義信奉者、スターリンによる影響は大きい。
近衛上奏文にある通りである。
支那事変は日本軍が勝手に起こしたと考える日本人は多い。
そうではないことが分かる、多くの人が読まれることを奨める。

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日中戦争の真実 (幻冬舎ルネッサンス新書 く 4-1) 新書 – 2015/8/5
黒田 紘一
(著)
日中戦争の本質は、日本の中国進出でも侵略でもないのではないか。
疑問を抱いた著者は独自に調査を重ね、いくつかの古い資料に行き当たった。
盧溝橋事件の影に隠れた「七・八通電」の存在、蒋介石、張治中、尾崎秀実、リヒャルト・ゾルゲ…。
陰謀、重要人物が次々と明るみになっていく過程で、日本の立ち位置、中国の日本に対する感情が露わになった。
この戦争の本質の在り処を問う、歴史認識に一石を投じる衝撃作。
疑問を抱いた著者は独自に調査を重ね、いくつかの古い資料に行き当たった。
盧溝橋事件の影に隠れた「七・八通電」の存在、蒋介石、張治中、尾崎秀実、リヒャルト・ゾルゲ…。
陰謀、重要人物が次々と明るみになっていく過程で、日本の立ち位置、中国の日本に対する感情が露わになった。
この戦争の本質の在り処を問う、歴史認識に一石を投じる衝撃作。
- 本の長さ308ページ
- 言語日本語
- 出版社幻冬舎
- 発売日2015/8/5
- ISBN-104344972651
- ISBN-13978-4344972650
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商品の説明
著者について
黒田 紘一(クロダ コウイチ)
1943年、長野県生まれ。
1943年、長野県生まれ。
登録情報
- 出版社 : 幻冬舎 (2015/8/5)
- 発売日 : 2015/8/5
- 言語 : 日本語
- 新書 : 308ページ
- ISBN-10 : 4344972651
- ISBN-13 : 978-4344972650
- Amazon 売れ筋ランキング: - 951,249位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,699位外交・国際関係 (本)
- - 62,410位新書
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年10月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に興味を持って読みました。
盧溝橋事件や第二次上海事変がコミンテルンなどソ連と
共同した中国共産党の仕業であり、戦争が始まってからは
徹底して和平を妨害したのも中国共産党であった、という
ことが各種資料に基づいて語られています。
歴代の中国共産党政権は、日本軍は中国人30万人を虐殺
したとして南京事件を世界に吹聴し国内的には抗日ドラマを野放し
にしたうえ日本人の残虐性を自国民に徹底的に刷り込んでいます。
中国は南京事件をユネスコを通じて記憶遺産に申請さへしています。
一方、中国の現状はどうでしょうか。
政治、経済、環境、人心の荒廃等、先行きは極めて危ういものと
成っており危機的な状況です。
かつて中国共産党は日中の和平を徹底的に妨害し、日本を
戦争に引きづり込みました。
正に著者の危機意識はここにあります。
現在の中国の先行きの危うさを解消する手段としてまたしても日本を
戦争に引きづり込む可能性は否定できません。
心ある日本人は心して読むべき書だと思います。
現在の日本及び日本人への警鐘の書です。
盧溝橋事件や第二次上海事変がコミンテルンなどソ連と
共同した中国共産党の仕業であり、戦争が始まってからは
徹底して和平を妨害したのも中国共産党であった、という
ことが各種資料に基づいて語られています。
歴代の中国共産党政権は、日本軍は中国人30万人を虐殺
したとして南京事件を世界に吹聴し国内的には抗日ドラマを野放し
にしたうえ日本人の残虐性を自国民に徹底的に刷り込んでいます。
中国は南京事件をユネスコを通じて記憶遺産に申請さへしています。
一方、中国の現状はどうでしょうか。
政治、経済、環境、人心の荒廃等、先行きは極めて危ういものと
成っており危機的な状況です。
かつて中国共産党は日中の和平を徹底的に妨害し、日本を
戦争に引きづり込みました。
正に著者の危機意識はここにあります。
現在の中国の先行きの危うさを解消する手段としてまたしても日本を
戦争に引きづり込む可能性は否定できません。
心ある日本人は心して読むべき書だと思います。
現在の日本及び日本人への警鐘の書です。
2015年10月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
筆者の経歴が省略されているので、やや不満です。その理由は、身辺に危険性があるから伏せているのでしょうか。