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著者や登場人物の『胸中の描写』は、3つの項目に絞って描くと上手くいく!

 

小説や詩・エッセイ、自分史などの原稿を執筆する際、誰でも登場人物や著者自身の『胸中の描写』をする機会があると思います。胸中の描写とは、喜びや苦しみ、悲しみといった人間が心に抱えている内面の部分を表現することです。

作品に深みを持たせ、読者の心を捉える重要な表現方法ですが、人間の内面を文章にして伝えるというのは、なかなか難しい作業でもあります。

ところがこの胸中描写、ある3つの項目に絞って文章を書くことで、誰でも深みのある表現が出来るようになります。今回はその詳細をお伝えしていきます。

 

胸中描写の例文

 

まずは以下の文章を読んでみて下さい。
『この日、この空、この私』(城山三郎・著)の一部を抜粋したものです。

 

若い医師から癌と宣告された。幸い一週間にわたる検診の最終結果は、若い医師の宣告とちがったものになり、私は命拾いした。
それ以降、何でもない一日もまた、というより、その一日こそかけがえのない人生の一日であり、その一日以外に人生はないと、強く思うようになった。
明日のことは考えず、今日一日生きている私を大切にしようと。

 

いかがでしょうか。
癌を宣告された著者が、その後逃れたことをきっかけに、一日一日を大切に生きようとする気持ちが伝わってきますね。
しかしこれだけでは、闘病記でよく見かける患者の気持ちを表した文章のようで、深く心に残るものではありません。

 

「遠景」「近景」「心情」の3項目で胸中描写をする

 

実は上記の文章、実際には長い前置きがあるのです。それを加えた上でもう一度読んでみましょう。

 

それは、何でもない東京の都心、ナイターの光で明るくなった夜空である。
だが、その夜空を見上げたとき、世の中にこんなに美しい空があるのかと、私は思った。

その空の下には、楽しそうな観客の大群が居て、それぞれ屈託なく、貴重な人生を生き続けている。それなのに、おれ一人は――と、そのとき私は打ちひしがれていた。
他でもない。体調不振、体重は四十七キロまで落ち、入院して精密検査を受けたころ、若い医師からガンと宣告された。
(中略)
次の日以降、病室の窓から見下ろす街行く人々が、どの人も幸福に輝いて見えた。
生きているそのことだけで、人間は十分に幸福。それなのに、なぜおれだけがと、無性に口惜しく、情なく、腹立たしかった。

幸い一週間にわたる検診の最終結果は、若い医師の宣告とちがったものになり、私は命拾いした。それ以降、何でもない一日もまた、というより、その一日こそかけがえのない人生の一日であり、その一日以外に人生はないと、強く思うようになった。明日のことは考えず、今日一日生きている私を大切にしようと。

 

このとおり、最初に記載した文章の2倍くらいの文字量で、前置きが書かれています。そして「遠景」「近景」「心情」の3つの項目について書かれていることが分かります。
遠景は、「東京の都心、ナイターの光で明るくなった夜空」
近景は、「病室の窓から見下ろす街行く人々」
心情は、「無性に口惜しく、情なく、腹立たしかった」「一日こそかけがえのない人生の一日であり…」

が当てはまりますね。
癌を宣告されて落ち込む自分を、「ナイターの光で明るくなった美しい夜空」や「病院の窓から見える幸せそうな人々」と比較することで、自分の辛い胸中を引き立たせています。
さらにこの前置きがあるからこそ、癌の宣告を免れた後の一日を大切にしようという心情が生きています。

このように、胸中を描写する際は、景色との距離感を表現した後に心情を描くことで深みが増します。ポイントは、遠景→近景→心情の順番にすること。読者に遠近の景色を思い浮かばせ、その上で心情を伝えることで、胸中描写がより引き立つのです。

 

以上のように、胸中の描写というのは以外にも簡単に書けるものです。まずは紹介した3項目に従い、自分自身や登場人物の胸中について描いてみましょう。
今まで何となく「浅いなあ…」と感じていた文章が、いっきに蘇るのではないでしょうか。

 

(参考:必ず書ける「3つが基本」の文章術

 
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