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<書くこと・読むこと>(2)高3の国語の時間(作家:山口紀美子)

『奪われた若き命 戦犯刑死した学徒兵、木村久夫の一生』の著者によるコラムです)

前回のコラムはこちら「<読むこと・書くこと>(1)高校時代の日記(作家:山口紀美子)

 

高3の現代文の授業で島木健作の“赤がえる”が取り上げられた。最初にS先生が、「島木健作の作品で何か読んだことある人」と問われた。そっと手を挙げて指名されると、「生活の探求」と答えた。先生はちょっと意外という表情で、「そんなむずがしの読んだのが」と言われた。たばこの農家の大変さが描かれた作品だったが、わたしはひきつけられて夢中で読んだ。自分の家でもたばこを作っていたからだと思う。

 

この書は、クラスに巡回されていた「レーニア文庫」の一冊だったこの文庫は物理学者武谷三男先生の奥様レーニア夫人から寄贈されたもので、文庫名もそこからきている。レーニア夫人はわたしたちの学校、会津女子校(現葵高校)の卒業生ということだった。ずっと心にあったことはこれだけだった。

 

今年五月、ふとした機会にレーニアさんのお父さんはロシアから亡命されたことを知った。レーニアさんはそのとき会津女子校に通学、卒業されたのだった。その後レーニアさんは東京女子医専を卒業、武谷三男先生と結婚された。このことを知ったとき、わたしは雲が晴れていくような気持になった。

 

このことがあってからすぐ、武谷先生ご夫妻のことでさらに詳しいことが分かった。幻冬舎のコラムを書くために高校時代の日記を開くと、高2の11月のページに思いがけないことが書いてあった。「今日で文化祭も完全に終了したわけだ。武谷先生の“原子力と平和”についての話は大変面白かった」の記述があったのである。ちなみにこのとき、レーニア夫人は農村の封建制度について話され「それは打ち破っていかなければならない」と述べられた。武谷先生、レーニア夫人、「レーニア文庫」について自分自身の日記からくわしくわかったことに、わたしは感動し、“赤がえる”の授業を思い浮かべた。

 

1983年3月、亡くなった母のために文集『たらちね』を私家版で発行した。これをS先生にもお送りした。先生からはすぐにお礼状が届いた。それには「80周年記念行事へのご協力よろしくお願いします」と記されていた。このとき先生は会津女子校の校長先生だった。

 

この度自著『奪われた若き命』を贈呈したく、同窓会事務局に住所を問い合わせたのであるが、そのときS先生が亡くなられていたことを知らなければならなかった。無念な思いはずっと消えることはないだろう。

■著者紹介
『奪われた若き命 戦犯刑死した学徒兵、木村久夫の一生』(山口紀美子・著)
1941年、日本は大東亜戦争(太平洋戦争)に突入する。日本では多くの国民が徴兵され、戦場に向かうことになった。そんな時代に行われた学徒出陣で徴兵された若者たちの中に、木村久夫という一人の青年がいた。
終戦後、戦地であったカーニコバル島の島民殺害事件に関わった人物として、木村久夫さんはイギリスの戦犯裁判にかけられ、死刑を言い渡された。その時木村さんが書いた遺書は、学徒兵の遺書をまとめた『きけわだつみのこえ』に収録されたことでよく知られている。
その『きけわだつみのこえ』を読み、木村久夫という個人に心惹かれた著者は、木村久夫さんの妹、孝子さんと何年も文通を重ね、木村さんのことをさらに深く知っていった。その後、孝子さん夫妻と実際に何度も会い取材を重ねていく中で、著者は木村久夫さんが歩んできた人生の足跡を辿っていくことになる。

 
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